研究課題/領域番号 |
25461459
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
翁 家国 自治医科大学, 医学部, 講師 (20398514)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 同種造血幹細胞移植 / 移植片対宿主病 / 移植片対白血病効果 / CD19キメラ抗原受容体 / Si-TCR |
研究概要 |
急性移植片対宿主病(GVHD)に対する免疫遺伝子治療の研究開発をおこなった。同種造血幹細胞移植後に起こるGVHDと移植片対白血病効果(GVL)は共にドナーリンパ球のT細胞受容体(TCR)がレシピエントの正常組織や白血病などの微小残存病変を認識することから始まる。そこでドナーのT細胞を遺伝子改変しGVHDを弱めたうえでGVL効果を高める免疫遺伝子療法の研究をおこなう。具体的な対象疾患はB細胞性急性リンパ性白血病である。ドナーT細胞の内因性TCRの発現を抑制することでGVHDを減弱させ、そこに腫瘍抗原特異的なCD19キメラ抗原受容体(Chimeric antigenn receptor:CAR)を発現させると抗腫瘍効果を高めることが可能となる。つまり、GVHDを安全に回避しつつGVL効果のみを効率的に得る事が可能となるわけである。更にこの技術はCAR部分をWT-1特異的キメラ抗原受容体に変える事で対象疾患を急性骨髄性白血病に広めることが可能である。加えてTCRの発現を減弱させる技術は、1人のドナーに由来するT細胞を、GVHDを惹起することなく複数のレシピエントに移植することを可能にする技術である。そのために(1)TCRの発現を抑制することでGVHDが減弱することを証明する。そこで(2)CD19CARを用いてGVLを増強するすることを証明(3)最後に(1)と(2)を用いてGVHDを回避しGVLのみを得ることを証明する。 (1)測定系の立ち上げ:mouse TCRα定常部分とTCRβ定常部分にプライマーを設定しリアルタイムPCRでmessengerレベルで発現を判定量できることを、B6マウスCD90陽性細胞とEL-4(マウスT細胞性白血病細胞株)を用いて確認した。更にフローサイトメトリー法を用いて蛋白レベルでもTCRβ(clone:H57-597)の発現を検出できること確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
(1)TCRの発現を抑制することでGVHDが減弱することをマウスモデルを用いての証明する:内因性のTCRを抑制する手法としてSi-TCRを用いて発現をノックダウンする方法の他、(2)zinc finger nuclease(ZFN)(3)TALEN(4)CRISPR/Cas9等を用いて遺伝子をノックアウトする方法が可能である。ここではSi-TCRの作成をおこなった。マウスTCR-α鎖とβ鎖の定常部分に対するSi-RNAを搭載しレポーター遺伝子としてZsGreenを発現するレトロウイルスベクターpMu1-SiTCR-ZsGreenを作製した。Packaging cell lineであるPLAT-Eに一過性にトランスフェクションしウイルス上清を得たが、ウイルスタイターは1.5-2.0x106 copy/mlと予想を下回る結果であった。そこでウイルス上清を大量調整し遠心で濃縮を試みたところ最終的に30倍から40倍への濃縮が可能であった。4-10x107 copy/mlまで濃縮しマウスCD90陽性細胞へ感染させると、遺伝子導入効率はSi-TCRを搭載しないコントロールベクターでは約60%であったが、Si-TCRを搭載したベクターでは13%前後と振るわずしかもTCR-βの発現も殆ど減弱しなかった。この結果は搭載したSi-TCRの配列部分に問題があると考えられたがそれ以上の原因は究明できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
TCRの発現を減弱させる次の手段としてCRIPR(RNA)とCas9 Nucleaseを用いる系で遺伝子のノックアウトを試みる。Mouse TCRαの定常部分を標的とするpRGEN-mouse-Trac-U6-SG-1、及びmouse TCRb1とTCRb2の共通部分を標的とするpRGEN-mouse-Trbc1&2-U6-SG-1を作製した。更にCMVプロモーター下にCas9 Nucleaseを発現するpRGEN-Cas9-CMVを作製した。Electroporationの手法でマウスT細胞、及びTCRを発現する細胞株EL-4(マウスT細胞性白血病細胞株)に強制発現しその効果を確認する予定である。 当初研究予定であったIL-21シグナル遮断による急性GVHDに対する新規治療法の開発にも着手する。ヒトGVHDにおけるIL-21の機能を解析するため患者の臨床検体を用いて、血清IL-21濃度の測定、生検組織でのIL-21の発現、患者末梢血単核球再刺激でのIL-21の産生能の測定をおこなう予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
計上した経費の主要な用途は消耗品(培地、抗生物質、牛血清、フラスコとディッシュ、ピペットなど)と血清サイトカイン測定試薬(Bio-Plexに用いるマルチサイトカイン測定試薬と各種ELISAキット)、サイミジンの取り込み試験に用いる測定プレートやアイソトープ、FACS抗体、リンパ球刺激用のanti-CD3/CD28マイクロビーズ、組織免疫染色に用いる各種資材と抗体、これらの殆どが前年度からの研究室の在庫で賄うことができ新たな出費を必要としなかった。 ヒトIL-21測定ELISAキット、ヒトIFN-g測定ELISAキット、ヒトTNF-a測定ELISAキットの他、組織免疫染色用の抗IL-21抗体、健常コントロール用の血液サンプルを提供するボランティアへの謝金などに使用する予定である。
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