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2014 年度 実施状況報告書

血小板とフォンウィルブランド因子の相互作用を中心とした血栓形成の制御

研究課題

研究課題/領域番号 25461463
研究機関藤田保健衛生大学

研究代表者

松井 太衛  藤田保健衛生大学, 医療科学部, 教授 (90183946)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワードボトロセチン / 血小板 / フォンウィルブランド因子 / 遺伝子組み換え / 血栓形成
研究実績の概要

1)昨年度までに,ボトロセチン2のβ鎖に関してVWFとの結合及びGPIbとの相互作用に重要なアミノ酸残基を同定した。また,逆荷電にした2箇所のアミノ酸変異を導入することで,VWFに結合するが血小板GPIbとの結合活性を持たない変異体の作製に成功した。さらに,この変異体はリストセチンによる血小板凝集惹起(RIPA)を阻害することを明らかにした。本年度は,この変異体がずり応力惹起血小板凝集(SIPA)に及ぼす影響を奈良医大輸血部(松本教授)との共同研究により行った。その結果,VWFとの結合に重要なアミノ酸であるβ鎖のAsp70をAlaに置換した変異体はVWFとの結合をELISA系では示さず,血小板凝集惹起活性も弱かったが,SIPAでは血小板凝集を促進させた。また,GPIbとの結合が低下する1アミノ酸置換の変異体はSIPAを阻害せず,促進的に作用した。これに対し,逆荷電にした2箇所のアミノ酸置換変異体はRIPA阻害と同様に,SIPA凝集を阻害した。すなわち,VWFに結合する活性はそのままに血小板との相互作用を持たず,逆に血小板の相互作用を抑制する新規のタンパク質であることが示された。

2)さらに,ボトロセチン2とVWFとの複合体の立体構造モデルから,両者の接触点をサーベイし,先の2箇所の荷電アミノ酸に加えていくつかの候補荷電アミノ酸残基を選定し,これも逆荷電アミノ酸に置換することでより強い血小板凝集阻害効果を狙って発現を行った。3種類の発現体はいずれもRIPAを阻害した。組換えタンパク質の発現量が少ないため,SIPAへの影響を調べたり,定量的な比較はできていない。

3)2014年度は,第9回日本臨床検査学教育学会(東京),第61回トキシン・シンポジウム(徳島)でこれまでの成果について口演発表した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

4: 遅れている

理由

当初考えていた以上に変異導入がうまく行かず,形質転換体がとれなかったため変異体cDNAがなかなか得られなかった。その原因として,変異導入に用いるPCR用プライマーの設計や温度プログラムが影響するものと思われた。プライマーの再設計やプログラムの試行錯誤を経て,変異体cDNAの調製に成功できた。しかし,cDNAを得たものの,アミノ酸変異によってはヘテロダイマーとしての発現量が少なく,十分なタンパク質が得られなかった。電荷を逆にした複数箇所の変異導入がボトロセチン2の立体構造に微妙な影響を及ぼし,ダイマー形成を妨げた可能性が考えられた。その他,マンパワーが不足しており,実験する時間が少なかったことも原因である。

今後の研究の推進方策

1)これまでの成果を国際血栓止血学会で発表するほか,論文として投稿する。
2)塩基性アミノ酸を酸性アミノ酸に置換する際にこれまで,グルタミン酸への置換を行ってきたが,アスパラギン酸への置換の影響を調べる。
3)AKTA pure装置が設置される予定であり,粗毒からのタンパク質の精製を再開する。標準物質としてのボトロセチンやビチセチンの精製のほか,VWFをターゲットとした新規結合タンパク質のスクリーニングをめざす。
4)これまでのin vitro 系の実験に加え,モデルマウス等を用いてのin vivo系の実験を模索し,変異導入ボトロセチンの抗血栓性を検証したい。
5)講義等の時間が多く,まとまった研究時間を作ることが難しいが,夏休み等の時間を利用して全力を注ぐ。

次年度使用額が生じた理由

前年度までの試薬の買い置きが間に合い,高価な試薬を節約できた。また,遺伝子改変の導入が遅れ,関連して遺伝子導入や細胞培養等に必要な試薬類の調達が少なかった。

次年度使用額の使用計画

物品購入に関しては,順次,細胞培養用試薬,遺伝子導入用試薬,抗体などの試薬購入に使用する。現在使用しているノート型パソコンが旧型で動作が遅く,重くて不便なことから,新規購入を予定している。また,デスクトップパソコンにおいても旧型となっており,購入を考える。
旅費として,2015年6月にカナダで開催される国際学会への出席と発表を行う経費を申請する。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2015 2014

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] フォンウィルブランド因子の糖鎖構造と機能~ABO血液型~2014

    • 著者名/発表者名
      松井太衛,濵子二治
    • 雑誌名

      血液フロンティア

      巻: 24 ページ: 45-54

  • [雑誌論文] Identification of a gene for an ancient cytokine, interleukin 15-like, in mammals; interleukins 2 and 15 co-evolved with this third family member, all sharing binding motifs for IL-15Rα2014

    • 著者名/発表者名
      Dijkstra JM., Takizawa F., Fischer U., Friedrich M., Soto-Lampe V., Lefèvre C., Lenk M., Karger A., Matsui T., Hashimoto K.
    • 雑誌名

      Immunogenetics

      巻: 66 ページ: 93-103

    • DOI

      10.1007/s00251-013-0747-0

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] A Galactose-Binding Lectin Isolated from Aplysia kurodai (Sea Hare) Eggs Inhibits Streptolysin-Induced Hemolysis2014

    • 著者名/発表者名
      Hasan I., Watanabe M., Ishizaki N., Sugita-Konishi Y., Kawakami Y., Suzuki J., Dogasaki C., Rajia S., Kawsar SM., Koide Y., Kanaly RA., Sugawara S., Hosono M., Ogawa Y., Fujii Y., Iriko H., Hamako J., Matsui T., Ozeki Y.
    • 雑誌名

      Molecules

      巻: 5 ページ: 13990-14003

    • DOI

      10.3390

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] REGULATION OF VWF-GPIB INTERACTION WITH MODIFIED RECOMBINANT BOTROCETIN2015

    • 著者名/発表者名
      T. Matsui, A. Hori, J. Hamako, F. Matsushita, N. Takagishi, K. Kondo, T. Kano, M. Hayakawa, M. Matsumoto, Y. Fujimura
    • 学会等名
      ISTH2015(国際血栓止血学会2015)
    • 発表場所
      トロント(カナダ)
    • 年月日
      2015-06-19 – 2015-06-24
  • [学会発表] Bitis arietansヘビ毒に含まれる血小板凝集惹起タンパク質ビチセチンの構造と機能2015

    • 著者名/発表者名
      松井太衛
    • 学会等名
      H27年トキシンシンポジウムミニセミナー
    • 発表場所
      東京(順天堂大学)
    • 年月日
      2015-02-28
  • [学会発表] フォンウィルブランド因子のグリコバイオロジー2014

    • 著者名/発表者名
      松井太衛
    • 学会等名
      第20回ADAMTS13研究会
    • 発表場所
      奈良市(奈良ホテル)
    • 年月日
      2014-09-18
    • 招待講演
  • [学会発表] VWF-GPIb依存性血小板凝集を惹起するヘビ毒ボトロセチンの発現と機能制御2014

    • 著者名/発表者名
      松井太衛,堀有紗,濵子二治,松下文雄,高岸菜穂,松本雅則,藤村吉博
    • 学会等名
      第61回トキシン・シンポジウム
    • 発表場所
      徳島(ルネサンス鳴門)
    • 年月日
      2014-09-03 – 2014-09-05
  • [学会発表] VWF-GPIb依存性血小板凝集を制御する組換えボトロセチン-2変異体の発現2014

    • 著者名/発表者名
      高岸波穂,堀有紗,松下文雄,濵子二治,狩野泰輝,近藤一直,松本雅則,藤村吉博,松井太衛
    • 学会等名
      第9回日本輪唱検査学教育学会
    • 発表場所
      東京(大田区産業プラザ)
    • 年月日
      2014-08-20 – 2014-08-22

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公開日: 2016-05-27  

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