研究課題
ヘビ毒由来のボトロセチン2は、フォン・ビルブランド因子(VWF)に結合し、血小板GPIbとの結合を介して血小板凝集を導く。これまでにボトロセチン2のVWF結合に重要なアミノ酸残基とGPIbとの結合に重要なアミノ酸残基を明らかにし、GPIb結合に関与する2つの塩基性アミノ酸を酸性アミノ酸であるGluに置換した変異体は、血小板凝集を惹起しないだけでなく、リストセチンや高ずり応力による血小板凝集を阻害する、全く逆の活性を持つことを明らかにしてきた。最終年度では、これら2箇所のアミノ酸残基を、別の酸性アミノ酸であるAspに置換した変異体を発現させ検討した。Asp置換変異導入組換えボトロセチン2は、Glu置換変異体とほぼ同等のリストセチン凝集抑制活性を示した。このことから、GluやAsp置換がボトロセチン2の立体構造に影響することも考えられるが、むしろ塩基性から酸性基に置換したことによる静電的な反発が阻害活性の原因であると考えられた。ただし、Asp変異体はGlu変異体に比べ細胞での産生量が低く、Glu変異体を産生する方が有利と考えられた。一方、ヒトの培養細胞での組換えタンパク質の発現以外に、昆虫細胞を利用した大量発現系の構築を試行した。和光純薬のプラスミドにボトロセチン2のcDNAを組み込んだものを調製し、昆虫細胞系発現を委託した。得られた培養上清から抗体カラムでボトロセチン2を精製したところ、α、β鎖からなるヘテロ2量体ボトロセチン2の産生に成功した。培養が小規模のため量的には少なかったが、これで大量培養に移せば十分量の組換えボトロセチン2を調製できることが示唆された。今後、Glu変異導入ボトロセチン2を使ったin vivoやex vivo系での抗血栓作用の検証の他、昆虫細胞系での変異体の発現をめざす予定である。
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Mar Drugs.
巻: 13 ページ: 7377-7389
10.3390/md13127071