研究課題/領域番号 |
25461466
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
奥 健志 北海道大学, 大学病院, 助教 (70544295)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 抗C1q抗体 / 難治性抗リン脂質抗体症候群 / 補体 |
研究概要 |
原発性抗リン脂質抗体症候群患者(APS)において補体第1成分であるC1qに対する自己抗体(抗C1q抗体)の陽性率が高値であり、その抗体価が、血清アナフィラトキシン値(血清C4a値)と相関することを初めて示した。抗C1q抗体は全身性エリテマトーデスなどで産生され、感染症などを契機に補体経路の異常活性化を惹起し、同疾患における全身性の炎症の一因になると考えられている。この自己抗体の存在はAPSにおける著明な補体活性化の一因と考えられるが、補体経路の異常活性化は炎症惹起作用と共に、血栓惹起能も有しており、血栓原性の病原性抗体である抗リン脂質抗体の存在下では抗C1q抗体による補体活性化の存在は血栓症の発症に関与すると考えられる。研究者の検討では、抗C1q抗体価が、血栓症や妊娠合併症を繰り返す難治性APS患者において高値であった。抗C1q抗体が存在することによって感染症など生体ストレスを契機に一気に補体活性化が起こり2次的に血栓傾向が亢進するためと推測された。一方、APSの特定の臨床症状やデータ(動脈血栓症、静脈血栓症、妊娠合併症、血球減少症)と抗C1q抗体の存在や抗体価は相関せず、抗C1q抗体はAPSの病態に対して広く影響を及ぼすと推測された。これらの結果については2013年の国際血栓止血学会総会、国際抗リン脂質抗体学会総会及び、アメリカリウマチ学会総会で報告し、その内容について論文投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
APSにおける補体活性化の機序として抗C1q抗体の存在が重要だという点を明らかにし、現在投稿中である。この点で、当初の計画より進展していると考えられる。一方、引き続き補体制御因子など、他のAPSの補体活性機序に関与する可能性があると想定される分子について検討中であり、この点では当初の計画より若干遅れている。 総じて評価するとAPS補体活性化への関与が大きいと考えられる因子(抗C1q抗体の存在)を解明した点で、研究は順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
現在、APS患者における抗C1q抗体以外の補体活性化因子の検索を行っている。また、モノクローナル抗C1q抗体であるJL-1(J Clin Invest, 2004)を入手し、in vitroで向凝固細胞(単球、血管内皮細胞)活性化能を確認しているが、末梢血単核細胞を同抗体と抗リン脂質抗体の併存下で培養した際に、凝固能の著明な活性化が認められており、今後は単球細胞株や血管内皮細胞での実験を検討している。これらの検討の結果をマウスに応用し、モノクローナル抗C1q抗体の投与や補体制御因子欠損マウスを用いて、抗リン脂質抗体の共投与による抗リン脂質抗体症候群モデルマウスを作成する
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次年度の研究費の使用計画 |
支出削減につとめ、当初予定していた海外学会参加費の科研費からの支出をとりやめたため。 余剰研究費は来年度の試薬費に充当する予定である。
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