研究課題
抗リン脂質抗体症候群(APS)における異常な補体活性化の機序として補体第1成分(C1q)に対する自己抗体(抗C1q抗体)の存在が重要と言う点を明らかにして現在投稿中である。抗C1q抗体はAPSと類縁疾患として認識されている全身性エリテマトーデス(SLE)において高発現していることが報告されているが(Katsumata et al, Arthritis Rheum, 2011)、APSでの報告は未だない。申請者は抗C1q抗体がSLEが合併しない原発性APSにおいて高率に発現しており、この存在が恐らく感染症などのトリガーイベントをきっかけに補体古典経路の活性化を促進し、血栓症の発症や難治化(標準的2次予防下での血栓症再発)に関与することを学会報告している(Oku et al, American College of Rheumatology annual meeting 2013, 日本血栓止血学会総会2014 他)。 また、補体制御因子のうち、血清H因子の発現低下がAPSで高率に認められることを解明し、近日中に投稿予定である。これらはいずれも患者データであり、それを元にin vitroでの検討を進めており、概ね良好な結果を得ている。すなわち、マウスモノクローナル抗C1q抗体を用いて、in vitroで補体系活性化と血栓傾向が再現される。これらから今年度は実際に、マウスモデルの作成を行い、血栓症の発現を評価する
3: やや遅れている
これまでのところ、APS患者データから抗C1q抗体が高頻度に存在することと補体制御因子、とりわけH因子の血清蛋白濃度が低下している点を確認しておりデータを投稿している。これを元に、APSモデルマウスを作成するため準備を行っているが、実験申請や予備実験に時間を要しており、近日中にマウスの実験を開始予定である。
今後は、balb/cもしくは動脈硬化モデルであるApoEKOマウスにマウスモノクローナル抗C1q抗体であるJL-1を投与して、血中の補体蛋白の活性化を確認するとともに、血栓の形成について定量的に評価する。十分なJL-1濃度及び、補体活性化のtrigger(例えばLPSの投与等)を適切に加えても血栓形成が明らかでない際には、共投与するモノクローナル抗リン脂質抗体の濃度を増量する。それでも血栓作成が明らかでない場合には、動脈結紮など従来の血栓症モデルと同様に侵襲的な処置を加え産生される血栓量の変化(血栓サイズの増大など)を確認する。また、H因子欠損マウスを用いて、JL-1、抗リン脂質抗体の共投与を行うモデルについて現在実験計画を申請者の施設において申請中である。
支出削減につとめ、当初予定していた海外学会参加費の科研費からの支出をとりやめたことと、実験計画からの遅れのため、マウスの購入・飼育費や投与する抗体の費用が不要となったため
来年度に試薬、マウス購入・試薬費としてあてる
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