研究課題
抗リン脂質抗体症候群(APS)はその半数が全身性エリテマトーデス(SLE)に合併する。SLEは代表的な低補体血症を来す疾患だが、研究者はSLEが合併しない原発性APS患者にも低補体血症及び補体活性化を認めることを報告し、局所の炎症と2次的凝固亢進によってAPSの主症状である血栓症発症に関与すると考えられている。本研究では、主にAPSにおける補体活性化の起点について検討した。APSでは循環血中の免疫複合体の発現は顕著でなく、抗リン脂質抗体(APL)がその主な対応組織である血管内皮細胞に結合し補体活性化を惹起すると考えられてきた。しかし、APLの主なサブタイプはIgG2であり、その免疫複合体は補体活性化能に乏しい。本研究では昨年迄に①補体第1成分(C1q)に対する自己抗体がAPS患者で高率に認められ、有意に難治性APSにおいて出現する②抗C1q抗体の存在は、補体前期蛋白の活性化断片であるアナフィラトキシンの血中濃度と有意な相関を認める点を解明した。最終年度は本データを投稿した(Oku et al, Rheumatology (Oxford) in press, Oku et al, Autoimmun Rev in press)。また、マウスモノクローナル抗C1q抗体であるJL-1を用いてin vitroでの検討を行った結果、JL-1は濃度異存性にマウス単球細胞株RAW264.7やヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)に結合し、凝固外因系のinitiator proteinである組織因子(tissue factor:TF)の発現亢進を促すことを解明した。この時、APLが併存することにより凝固傾向は亢進する。現在、in vitroのデータを投稿準備中であり、また、balb-cマウスにAPLモノクローナル抗体及びJL-1を投与する疾患モデルマウスを作成し、解析中である。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (10件) (うち国際共著 2件、 査読あり 8件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 3件、 招待講演 3件)
Rheumatology(Oxford)
巻: Epub ahead ページ: Epub ahead
10.1093/rheumatology/kew196
Autoimmunity Reviews
巻: in press ページ: in press
10.1016/j.autrev.2016.03.017
Lupus
10.1177/0961203316638165
10.1093/rheumatology/kew005
巻: 24 ページ: 1135-42
10.1177/0961203315578765
巻: 24 ページ: 774-5
10.1177/0961203314561284
Arthritis and Rheumatolgy
巻: 67 ページ: 396-407
10.1002/art.38924
巻: 54 ページ: 39-44
10.1093/rheumatology/keu166
日本臨床免疫学会会誌
巻: 38 ページ: 157-63
10.2177/jsci.38.157