研究課題
ペア型受容体であるLILR (Leukocyte Immunoglobulin-Like Receptor)は、活性化型、抑制型、分泌型からなり、免疫機能の調節に関わっている。LILR遺伝子群の膠原病への寄与が示唆されていることから、本研究ではLILR遺伝子と膠原病の疾患関連研究を行っている。唯一の分泌型であるLILRA3 には遺伝子の大部分(6.7kb)を欠失する多型が存在し、膠原病との関連も報告されている。本年度は、LILRA3欠失多型と日本人全身性エリテマトーデス(SLE)および全身性強皮症(SSc)との関連を検討した。SLEにおいては有意な関連は検出されなかった。SScの解析では、SScで検出される自己抗体の1つである抗トポイソメラーゼ抗体の陽性患者において欠失アリルの増加が観察された。一方、SSc病型や抗セントロメア抗体との関連は認められなかった。I型IFN産生に関わるLILRA4については、tag SNPの解析で関連が検出されたLILRA4下流のSNPについて、独立のサンプルを用いてreplication studyを施行した。replication studyでは有意差には至らなかったが、2つのデータをメタアナリシスで統合すると、有意な関連が残った(P=0.003, オッズ比=1.38)。また、LILR遺伝子発現とSLEの関連を検討するために、SLE患者9例、健常対照者15例の末梢血からtotal RNAを抽出し、マイクロアレイを用いた発現解析を施行した。その結果、複数のLILR遺伝子において発現増加が観察された。今後、多数検体を用いて発現との関連を検討するとともに、関連遺伝子の発現に影響するeQTL SNPの探索、および、eQTL SNPを対象とした疾患関連研究を進める予定である。
3: やや遅れている
研究機関における耐震改修工事のため、2度の引越しを行った。引越し準備および引越し後のセットアップに時間を要したため、実験を行えない時期があった。
1. tag SNPの解析によりSLEとの関連が検出されたLAIR遺伝子(LILRA4に隣接) SNPとの関連をreplication studyにより確認する。関連SNPと連鎖不平衡にあるSNPの中から機能的SNPを特定し、機能的影響の解析を行う。2. 一部のLILRは、HLAクラスIをリガンドとして活性化あるいは抑制シグナルを伝達することから、LILR遺伝子とHLA遺伝子の相互作用を検討する。3. 発現解析においてSLEとの関連が認められたLILR遺伝子について、データベースを用いてeQTL SNPを探索し、eQTL SNPのSLE疾患感受性への影響を検討する。膠原病には共通の疾患感受性遺伝子が多数存在することから、関節リウマチ、ANCA関連血管炎、全身性強皮症との関連も検討する。
研究室の引越しのため計画通りに研究が進まず、機能的SNPの特定まで至らなかったため、機能解析まで行うことが出来なかった。
LILR遺伝子およびHLA遺伝子の多型タイピングに用いる試薬代、消耗品代として75 万円、機能解析に用いる試薬代、消耗品代として40万円を使用する。国内外での学会発表のための出張費として40万円、論文掲載料として10万円を使用する。
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http://www.md.tsukuba.ac.jp/community-med/publicmd/GE/