研究課題
基盤研究(C)
樹状細胞(Dendritic Cell:DC)における細胞質型チロシン脱リン酸化酵素Shp-1の機能解析を目標にCre-loxP システムを用いてDC特異的にShp-1が欠損するコンディショナルノックアウトマウス(Shp-1 cKO)を作製した。Shp-1 cKOマウスではDCの活性化に加えてT細胞からのIFNγの産生亢進があり、腎臓では加齢に伴い免疫複合体が沈着して糸球体腎炎が発症する。 本研究ではShp-1 cKO を用いて、DCおよびT細胞の機能異常がもたらす自己免疫疾患発症の分子機構を詳細に検討する目的で、糸球体腎炎の病理組織学的な解析を行い、腎臓内に分布する免疫担当細胞の変化をフローサイトメーター(FCM)にて解析した。腎臓の組織標本を用いて免疫組織染色を行う場合、固定法によっては染色結果が不安定になることがある。そのため本研究においては、良好な染色性を得る目的でホルムアルデヒドやアセトンまたは亜鉛を用いた各種の固定法を試み、安定した免疫組織染色法を確立した。その結果、cKOでは、コントロールマウスに比べ、糸球体にIgGおよびC3の強い沈着があり、メサンギウム領域の拡大が認められた。また、間質を中心に単核球の浸潤が観察された。免疫組織学的な検討では浸潤する細胞の多くがThy1抗原陽性のT細胞であり、F4/80陽性のマクロファージの増加も認められた。さらに、コラゲナーゼ処理を行うことにより得られる腎臓由来の単核球を用いたFCMによる解析でも、40週齢のマウスではT細胞やマクロファージの増加が確認され、これらの結果は腎の免疫組織染色の結果に一致するものであった。
2: おおむね順調に進展している
本研究課題においてはSHP-1のcKOに見られる腎臓を中心とした臓器特異的な自己免疫疾患の解析を目標に研究を進めており、第一の目標として腎臓における炎症性細胞の同定と分離の準備を行った。本年度の研究により腎臓内のT細胞やマクロファージのFCMを用いた解析の準備が整い、炎症細胞のサイトカインプロファイルを確認する事が可能になった。
本研究課題においてはSHP-1のcKOに見られる自己免疫疾患の解析を目標に研究を進めているので、SHP-1cKOの安定的な生産が重要になる。本年度においては当大学の動物実験施設が改修工事により十分な飼養環境を確保することが困難であった。しかし、次年度からは新規の動物実験施設が稼働するため、本年度より多くのcKOを用いた解析が可能になり、研究の円滑な推進が期待されている。また、SHP-1cKOの遺伝的均一性をさらに高めるために行っている戻し交配も順調に進行しているので、次年度以降においてはより純度の高い実験が可能になる。
遺伝子改変マウスの飼養環境に制限があったため少数のマウスを用いた予備実験は済んでいるので、次年度以降にサンプル数を増やしてデータを蓄積する。
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Am J Physiol Renal Physiol.
巻: 305 ページ: F861-70
10.1152/ajprenal.00597.2012