Janus kinase (Jak)は各種サイトカインがその生物学的活性を発揮する際に必須のチロシンキナーゼであり、その阻害薬であるtofacitinibは近年関節リウマチの新規治療薬として注目されてきている。当研究室では、抑制性サイトカインIL-10を高産生するCD4陽性CD25陰性LAG3陽性 制御性T細胞(以下、LAG3 Treg)を同定している。転写因子Egr2の強制発現はナイーブT細胞にLAG3 Tregの表現型を付与することより、Egr2はLAG3 Tregによる抑制能におけるmaster regulator geneであると考えられている。申請者はtofacitinibがEgr2高発現T細胞を誘導するという知見を既に得ており、本課題ではJak阻害剤等により誘導されるT細胞の機能解析とその誘導機序解明を通して、新規免疫抑制療法の開発を目指す。平成25年度は、TofacitinibによるLAG3 Treg様細胞誘導条件を確立するため以下の検討を行った。C57BL/6マウスより回収したCD4陽性CD62L陽性 ナイーブT細胞を、T細胞受容体刺激下に各種濃度のtofacitinibを添加して培養を行ったところ、Egr2を最も効果的に誘導する条件は低濃度条件であるという知見を得た。ヒトの関節リウマチのモデルとしてII型コラーゲン誘発関節炎(CIA)が知られているが、DBA1/JマウスはCIA高感受性である。そこで、DBA1/Jマウスより回収したCD4陽性CD62L陽性 ナイーブT細胞でも上述と同様の検討を行い、tofacitinibの至適濃度を決定した。以上の検討により、各種実験モデルマウスにおけるtofacitinibによるLAG3 Treg様細胞の誘導条件を確立した。平成26年度は第58回日本リウマチ学会学術集会に参加し、LAG3 Tregおよびtofacitinibにつき、他施設の研究者との情報交換に努めたが、病棟業務と実験の両立が難しく、研究を継続することができなかった。
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