研究課題/領域番号 |
25461477
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
中村 英樹 長崎大学, 病院(医学系), 講師 (10437832)
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研究分担者 |
中村 龍文 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 客員研究員 (00198219)
寳來 吉朗 長崎大学, 病院(医学系), 研究員 (30646782)
川上 純 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (90325639)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | HTLV-I / シェーグレン症候群 / ICAM-1 / IP-10 / RANTES |
研究実績の概要 |
HTLV-I感染とシェーグレン症候群(SS)発症との関連は疫学的検討で証明されているが、その裏付けとなる分子生物学的機序の解明については申請者以外からは報告がなかった。今回HTLV-I 感染細胞株(HCT-5)とSS患者由来の初代培養唾液腺細胞(SGEC)との共培養を行い、感染が成立するかを検討した。この結果共培養96時間では7.8±1.3%のSGECにHTLV-I関連蛋白発現が確認された。共培養後のSGECライセートを用いて、HTLV-I関連蛋白発現を試みたが、固着するHCT-5のためSGECのみでのこれらの分子発現検討は困難であった。このため、HTLV-I tax プライマーを用いたin situ PCRを行ったところ、共培養48時間以降陽性像が得られた。共培養0-96時間の上清における抗体アレイ解析では、経時的に可溶性intercellular adhesion molecule-1 (ICAM-1), interleukin-8, interferon γ-induced protein 10kDa ; IP-10( 別名CXCL10) regulated upon activationおよびnormal T-cell expressed, and secreted (RANTES) などの発現増加が半定量法でみられた。このためELISA法での定量化を行ったところ、sICAM-1, RANTES, IP-10については有意な増加が確認された。これらの分子は免疫染色でSGEC上にも発現しており、HTLV-I関連蛋白と共発現している細胞も観察された。また共培養したSGECライセートに対する抗体アレイでは、チトクロームC、Fasなどのアポトーシスを誘導する分子と共にBcl-2、HO-2、HSP-27など生存因子も発現していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
予定以上に研究が進まない点としては、通常診療内でシェーグレン症候群が疑われる患者さんに対して小唾液腺生検を行っているため、生検実施頻度に初代培養の回数が規定されている点である。既存の細胞株を使った実験ではないため、生検依頼数によっては実験の遅れが生じる。また細胞のコラーゲン・コートプレートへの生着の程度にも症例によって差がある。一定の生着状況ではないため、唾液腺組織の初代培養を開始できても目的のSGECが得られないことが多々見られる。このように生検頻度と細胞の生着という2点が複合している理由で、予定通り実験が行えない場合があるため。
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今後の研究の推進方策 |
アレイ解析による半定量法およびenzyme-linked immunosorbent assay法により、HTLV-I感染後に増加する分子群の定量化が確認された。また10%未満の頻度でHTLV-Iがin vitroの環境においてはSGECへ感染可能であることが示された。しかしながら二次濾胞形成に関わるCXCL13の頻度がHTLV-I関連脊髄症患者唾液腺で少ない理由などが明らかにされていない。今後はヒト扁桃組織から濾胞性樹状細胞を樹立し、HTLV-I感染の影響を確認するなど更なる分子学的アプローチが必要と考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
培養上清のサイトカイン・ケモカイン測定に使用するキット単価が大きく、複数キット購入を予定した場合、予算を超過してしまうため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度の研究予算に次年度使用分を組み入れ、ELISA用キットを複数個購入する予定であり、細胞培養に必要な無血清培養液、培養プレート等および、免疫に必要な一次抗体の購入に使用予定。
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