研究課題
全身性エリテマトーデス(SLE)やシェーグレン症候群(SS)は全身性自己免疫疾患に属し,その発症機序は不明である.新規治療法の開発にはこれらの疾患の発症機序に対する理解が必要である.そこで本研究では,患者検体を用いてSLEやSSでみられる自己抗体の対応抗原であるTRIM21について,①発現量とSLE・SS罹患との関連,②発現量とI型インターフェロン産生との関連,③発現量と疾患活動性との関連,④新規治療標的としての可能性の4点を調べ,SLE・SSでの病態における炎症制御機構の破綻におけるTRIM21の役割を解明するとともに,炎症制御のための新たな治療戦略の可能性を検討することを目的としている.SLE・SS患者および健常者からPBMCを採取してqPCR法を行った結果,SLE群及びSS群では健常者群と比較してTRIM21の発現が有意に高かった.I型IFN誘導遺伝子群の発現量もSLE群では健常者群と比較して有意に高かった.一方,I型IFNのmRNA発現量はむしろSLE群で有意に低かった.健常者ではTRIM21のmRNA発現とI型IFNのmRNAの発現量は逆相関していたが,SLE患者ではこの相関がみられなかった.SLEの疾患活動性とTRIM21の発現量の関連を縦断的に検討した結果,TRIM21 mRNAの発現はSLEの疾患活動性と関連していた.抗TRIM21抗体の有無に分けてTRIM21 mRNAの発現量とI型インターフェロンの発現の関連を調べた結果,抗SS-A抗体の有無によって相関に相違がみられた.以上から,①TRIM21が生理的にはI型IFNの発現を抑制していること,②SLEではTRIM21によるI型IFNの発現抑制が破綻していること,③IRF群のユビキチン化や抗TRIM21抗体がこれに関連していることが示唆され,TRIM21がSLEの新規治療標的となる可能性があると考えられた.
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