研究課題/領域番号 |
25461483
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
吉本 桂子 慶應義塾大学, 医学部, 研究員 (20383292)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | BAFF / BAFF受容体 / IL-6 / 医薬品リポジショニング / 単球 / B細胞 / IgG / シェーグレン症候群 |
研究実績の概要 |
本研究は未だ治療薬の無いシェーグレン症候群(SS)の治療薬開発に向け標的候補分子を見出し創薬へと橋渡しをすることを目的としている。具体的にはSS患者末梢血単球におけるB細胞活性化因子(BAFF)シグナルを特異的に阻害する化合物を細胞を用いた評価系で探索し、その作用点を明らかにする。我々はこれまでSS患者末梢血単球ではBAFF受容体(BR3)の発現が異常に亢進し、このことが起因となり末梢単球からのBAFFによるIL-6産生が亢進していることを見出した。さらにSS患者末梢血単球におけるBR3発現量と患者血清IgG量に正相関があることから、末梢血単球におけるBR3発現は高IgG血症を伴う疾患であるSSの病態に関与することが示唆された。そこで昨年度から既承認薬ライブラリーを用いて単球からのBAFFによるIL-6産生を抑制する薬剤を探索する医薬品リポジショニングの検討を開始した。具体的にはヒト単球系細胞株(THP-1)を用いた刺激培養系を一次スクリーニング系として利用しスクリーニングを行う。昨年度に引き続き、今年度も医薬品リポジショニングによるスクリーニングを続行し、計222医薬品のスクリーニングを行った。その結果、約20種の医薬品がTHP-1からのBAFFによるIL-6産生抑制作用を有することが判明した。さらにこれらの医薬品についてヒト末梢血単球をBAFF存在下で培養し得られるIL-6産生に対する影響を二次スクリーニングとして検討した。その結果、数種類の医薬品が末梢血単球からのBAFFによるIL-6産生抑制作用を有することが明らかとなった。これらの医薬品はBAFFシグナルを阻害しIL-6産生抑制機能を発揮していることが推測される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々がこれまで得た知見より、SS患者末梢血単球においてBAFF受容体発現が亢進しており、これが高IgG血症を伴うSSの病態に関与していることが明らかとなった。この結果より今年度はBAFFによりIL-6産生が誘導されるヒト単球系の細胞株(THP-1)を用いて既承認薬を用いたリポジションニングのためのスクリーニングを行った。222種類の既承認薬のBAFFによるIL-6産生に対する効果の評価を遂行し、IL-6産生抑制効果を認める医薬品を見出した。さらに今年度は二次スクリーニングとしてこれらの医薬品について末梢血単球を用いた培養系での評価に進むことができた。これらの医薬品の一部は共通の作用機作を有していることが明らかになり、今後のBAFFシグナル関連標的分子を示唆するものでもあると考えられる。さらに今後B細胞機能への影響検討や動物モデルへの投与の方向性が明確になった経緯からも研究は順調に進捗していると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでの結果を受け、医薬品リポジショニングを目的としたスクリーニングから得られた候補医薬品についてB細胞からのIgG産生を検討するin vitroの三次スクリーニング系にて評価を進めていく予定である。具体的にはSS患者末梢血よりB細胞を単離し、同じく末梢血から分離した単球とBAFFと共に培養する。この培養系ではB細胞からのIgG産生が亢進するが、これに対する候補医薬品の効果を評価する。三次スクリーニングでIgG産生抑制効果が認められた医薬品について、炎症モデルマウスなど病態モデルマウスに投与し、病態で効果を検討する。一方で、これらの医薬品の作用点を明らかにするため、BAFFシグナルに関与する蛋白質の同定を、抗リン酸化抗体等を用いたハイコンテントスクリーニング法等で解析する。
|