研究課題
基盤研究(C)
B細胞や単球系細胞で抑制性のシグナルを伝えるFcγRIIBは、自己免疫疾患の発症に重要であることが知られている。このFcγRIIBを欠損するC57/BL6(B6)マウス(KO1マウス)は、関節リウマチ(RA)に類似した病態を発症する。我々は、このKO1マウスにSLEの病態を促進させるYaa遺伝子、NZW系遺伝子を導入することによる病態の変化の変化とその遺伝的要因を調べることを目的とした。KO1マウスとB6.Yaaマウスとの交配によりKO1.Yaaマウスを、またKO1マウスとNZWマウスの交配により(KO1xNZW)F1マウスおよび(KO1xNZW)F2マウスを作成した。FcγRIIBを欠損するそれぞれの系統マウスの病態を解析した。また、(KO1xNZW)F2マウスについては、ループス腎炎およびRAの発症に関わる原因遺伝子のマッピングを行った。KO1.Yaaマウス、(KO1xNZW)F1マウスにおいて6~8ヶ月齢で関節炎の発症は認めず、ループス腎炎類似の糸球体腎炎を発症した。血清中抗CCP抗体、抗ds-DNA抗体は、B6、KO1マウスと比較して有意に上昇していた。(KO1xNZW)F2マウスの解析では、ループス腎炎が約33.7%、唾液腺炎が約27.6%、RA類似関節炎が6.1%に認められ、これらの病態を重複して発症するマウスの存在も認められた。(KO1xNZW)F2マウスを用いたQTLマッピングでは、いくつかの染色体領域にループス腎炎、関節リウマチ類似の関節炎、唾液腺炎と関連する遺伝子群を見出し、それぞれを重複する病態に関わる遺伝子も同定された。我々の研究結果から、第1染色体FcγRIIBの欠損に加え、Yaa遺伝子、NZW系遺伝子が加わることでRA類似の病態はSLE類似の病態へ変化し、病態の変化に関わるいくつかの遺伝子群を同定した。
2: おおむね順調に進展している
研究目的の大きな課題である、B6. FcγRIIB欠損 (KO1)Yaaマウスならびに[B6.FcγRIIB欠損(KO1)x NZW]F1マウス、F2マウスの作製・管理・維持が順調に進行し、それらのマウスの病態の変化について継時的に観察することができた。さらにそれぞれのマウスについて免疫病理組織学的な解析を行うことができ、データを蓄積することができた。
作製されたマウスの維持、管理を徹底し、さらなる病態解析を行う。具体的には、当初の計画通り、それぞれの系統マウスの末梢血、脾臓、腎臓、関節、リンパ節における免疫担当細胞の解析(フローサイトメトリー、免疫病理組織、培養細胞を用いた刺激試験など)を行う。またそれらの系統マウスにおける関節リウマチ、全身性エリテマトーデスの病態に関わる遺伝子解析を進める。さらにそれらの病態を抑制する遺伝子やサイトカインの同定解析を進めていく。
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Eur J Immunol.
巻: 43 ページ: 1-9
10.1002/eji.201243057