研究課題
基盤研究(C)
新たに開発したAC13のELISA測定系を用いて顕微鏡的多発血管炎(MPA)患者の血清AC13濃度を測定し、臨床病態との関連性を解析した。症例は13例(女性8例)、平均年齢67.1歳、平均罹病期間6.5ヶ月であり、AC13濃度の平均値はELISA法で206 ng/mL、質量分析法(MS)で20.1 AUであった。AC13(ELISA)とAC13(MS)との数値間に相関傾向はあったが、有意差は認められなかった(P=0.052)。AC13(ELISA)と血清クレアチニンの間に有意の正の相関が認められた(P=0.027)。その結果、MPA患者における血清AC13(ELISA)は腎機能悪化時に上昇することが見いだされ、今後詳細に解析する必要性が示唆された。一方、AC13の機能解析のため、AC13存在下でヒト肺微小血管内皮細胞(hMVEC-L)、ヒト皮膚微小血管内皮細胞(hMVEC-D)、およびヒト線維芽細胞を培養し、非存在下の場合との蛋白プロファイルの差を比較した。全752スポット中、AC13存在下で1.3倍以上に変化するスポットを31認めていたが、そのうち5個について同定結果を確認した。それらは、hMVEC-Lのみで増加するmajor vault protein(1.60倍)とeukaryotic translation elongation factor(1.32倍)、hMVEC-Dのみで増加するfascin homolog 1(1.30倍)、およびhMVEC-Dのみで減少するenolase 1 alpha(1/1.44)とprofilin 1(1/2.17)であった。これらの事からAC13は、hMVEC-Lではシグナル伝達や細胞内輸送、翻訳等の機能を亢進し、hMVEC-Dでは細胞骨格の構成や糖代謝に影響する可能性を示した。
3: やや遅れている
MPA患者血清および対照血管炎患者ならびに健常者の血清を用いて、ELISAによるAC13濃度とMSのイオン強度に基づくAC13量の相関を比較しながらAC13変動の臨床的意義の解析を進める予定であったが、今年はMPA患者の入院時の血清AC13の測定とその解析にとどまった。一方、AC13の受容体の探索のため、合成AC13ペプチドのC末端をビオチン化したペプチドを準備し、このペプチドがヒト微小血管内皮細胞に結合するかを、IL-6およびIL-8の産生能が上昇するかにより確認を試みた。しかし細胞の増殖能力が高く、無刺激の場合にもIL-6およびIL-8の産生能が高いため、AC13ペプチドを添加した場合において無添加の場合と差が認められなかった。また、AC13以外のMPAのバイオマ―カー候補ペプチドについてはイオン強度の低いものが多く、直接質量分析を行うことが難しかった。これらのペプチドを同定するためには、2次元高速液体クロマトグラフィー等を用いて、目的のペプチドを個別に濃縮する必要がある。
経時的に採血・保存されたMPA患者(および対照疾患患者ならびに健常者)の血清を用いてELISAによるAC13濃度を測定して、AC13変動の臨床的意義の解析を進める。特に、平成25年度の解析で見いだされたAC13と血清クレアチニン濃度の有意な相関の臨床的意義の解析を、他の腎機能障害患者の血清をも用いて行う。また、症例によっては、ELISAによるAC13濃度とMSのイオン強度に基づくAC13量の相関を比較しながら、意義解析を進める。一方、AC13の作用発現の分子機序の解析においては、ヒト微小血管内皮細胞の培養条件を培地中の血清濃度の調整等により工夫し、増殖能およびIL-6、IL-8の産生能を低下させた状態にして、改めてC末端ビオチン化合成AC13ペプチドの結合の有無を評価する。結合が確認されれば、AC13ペプチドカラムを作製し、ヒト微小血管内皮細胞から調整した蛋白質をアプライして、上記受容体蛋白質を結合させた後に、pH等の条件変化により溶出して、得られた蛋白質を質量分析にて同定する。また、イオン強度の比較等から判断して、これまでに得られた複数のMPAバイオマ―カー候補ペプチドの中で最も有望なのはAC13である。AC13がMPAの病態に影響すると仮定した場合に重要な点は、受容体等を介して細胞へシグナルを伝える際の分子機構であると考えられるため、この部分の解析を中心に実験を進める。
早期にまとまった結果が出た時にshort reportとして英文雑誌への投稿を予定し、そのための論文別刷等の費用として5万円を研究計画書に計上していたが、実際は研究経過の遅れから論文投稿に至らず、次年度使用額が生じた。平成26年度には論文発表を目指して研究を進捗させる予定である。また、研究の展開によっては、既に計上している薬品費、ガラス器具費等の不足が見込まれるため、その補充に充てることも計画している。
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