研究実績の概要 |
アポリポ蛋白質A-IのC末端13アミノ酸残基として同定されたAC13は、顕微鏡的多発血管炎(MPA)において血管炎の増悪に特異的に関わる断片ペプチドであるが、今年度は主としてAC13が微小血管内皮細胞にもたらすシグナルの経路を探索した。皮膚または肺の微小血管内皮細胞をAC13で刺激した際に、無刺激と比較して1.2倍以上に発現が変化した蛋白質の中で、対照とした線維芽細胞では同様の変化が認められなかった9個の蛋白質を用い、ingenuity pathway analysis (IPA)により解析した。上記の9個の蛋白質のうちKCTD12を除く8つの蛋白質(MVP, EF2, HSPA8, GRP75, FSCN1, ENOA, HSP27, PROF1)は直接的、またはHIF1A, RFWD2, ERK1/2, SYVN1, TNF, ERBB2, RELAを介して間接的に相互作用する可能性が示された。以上より、AC13は以前に報告した微小血管内皮細胞におけるIL-6およびIL-8の産生上昇のみならず、TNFによる炎症やERK1/2による細胞増殖・接着の亢進等により、MPAの血管炎を増悪させる可能性が示唆された。 一方、昨年度の血清検体の解析で、ELISAで測定されるAC13濃度とMSイオン強度に基づくAC13量との間に有意の相関関係が認められなかったが、今年度の解析により、本ELISA系では検体中のAC13とアポ蛋白との交差性がわずかに認められ、それが測定結果に影響することが明らかとなった。検体をあらかじめ酸エタノール処理等で除蛋白を試みたが不安定であり、今後血清AC13のマススクリーニングのためにはELISA系の改良の必要があると考えられた。
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