研究課題/領域番号 |
25461492
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
玉地 智宏 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20456015)
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研究分担者 |
高取 宏昌 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (30568225)
廣瀬 晃一 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90400887)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 難治性喘息 / 樹状細胞 / 気道上皮細胞 / IL-23 |
研究実績の概要 |
本研究者らは、アレルギー性気道炎症において、①気道上皮細胞がIL-25を産生しTh2型免疫応答を惹起すること(J Allergy Clin Immunol 2006 Tamachi)、②樹状細胞がIL-23 を産生し、Th17 細胞依存的な好中球性炎症を誘導するとともに、Th2 細胞依存的な好酸球性炎症を増強すること(AJRCCM 2008 Wakashin)を報告し、重症喘息における病態機序の可能性を示した。しかし樹状細胞からIL-23が産生される機序は依然不明である。そこで本研究では、アレルギー性気道炎症におけるIL-23産生樹状細胞の誘導機構を明らかにすることを目的とした。 真菌感染は重症喘息への関与が知られており、真菌のαマンナンの受容体であるDectin-2はTh17細胞分化を誘導することが報告されている。今回、ハウスダスト抽出物(HDM)を用いた気管支喘息のモデルマウスの解析の結果、Dectin-2欠損マウスにおいて、アレルギー性気道炎症の減弱とともに、Th2細胞とTh17細胞の分化の減弱が認められた。さらにDectin-2を欠損した樹状細胞はproinflammatoryサイトカインや副刺激分子の発現も低下していることが明らかとなった。(Am J Respir Cell Mol Biol. 2014 Norimoto)。以上よりDectin2のシグナル伝達経路がIL-23産生樹状細胞の誘導に関与している可能性が考えられ候補因子の解析を行っている。 並行してマウスの気管から気道上皮細胞を単離して、Air-Liquid Interface Cultureを行い、骨髄由来樹状細胞(BMDC)と共培養する技術も確立した。それにより気道上皮細胞を存在下では、 BMDCはCD80,CD86を高発現することが示された。現在IL-23を誘導する因子を同定するための解析を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
既にアレルギー性気道炎症のモデルマウスの作成と解析が行える状況にあり、さらに樹状細胞と気道上皮細胞の単離も可能であり、Dectin-2欠損マウスの解析結果もふまえ、おおむね順調に進展している。 当初の研究計画にある気道上皮細胞からのアプローチも、HDMを経気道投与した気道上皮細胞を単離してRNAシークエンスによる網羅的な遺伝子解析を行ない、候補遺伝子に着目した気道上皮特異的な強制発現マウスや欠損マウスの作成を進めている。 マウスの気管から単離した気道上皮細胞をAir-Liquid Interface Cultureで長期間培養することも可能となり、BMDCと共培養を行う実験も開始している。 さらに樹状細胞に関しても、アレルギー性気道炎症において単球由来のinflammatory DCs (iDCs)が気道局所に集積してArginase1を発現していることを明らかにしており、DCサブセットの解析は順調に進んでいる。 これらの結果を総合的に判断し、本研究計画はおおむね順調に進展しているものと判断する。
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今後の研究の推進方策 |
まず、Air-Liquid Interface Cultureにおける気道上皮細胞を骨髄由来樹状細胞(BMDC)の共培養の実験系において、BMDCにおける IL-23p19 の発現を定量的RT-PCR 法により解析し、重症喘息モデルの気道上皮細胞がIL-23p19産生誘導能を示すか否か検討する さらにHDMを経気道投与した気道上皮細胞のRNAシークエンスの解析から絞った候補遺伝子について、気道上皮細胞株を用いてvitroでの解析をすすめるとともに、気道上皮特異的な強制発現マウスや欠損マウスの作成を進めており、そのマウスの喘息モデル解析を行う。 また候補遺伝子の一つであるDectin2がどのようにIL-23産生樹状細胞の誘導に関与しているか解析を更に進める。あわせてIL-23産生のDCサブセットの同定もすすめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度に予定されていた遺伝子改変動物の新規作成とマウスの導入が、海外から導入でH26年4月にずれこんだため、それに伴う実験にかかる費用があわせてずれこんでいる。そのため、初年度170万、2年目150万の予定支出のうち、193万円強の支出となっている。
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次年度使用額の使用計画 |
本研究の達成には、引き続きマウスの購入、Air-Liquid Interface Cultureなどの細胞培養に要する培養液/牛血清/プレート、各種解析に必要な抗体、合成DNA、制限酵素等の分子生物学的な試薬を要し、次年度使用として繰り越した126万円と当初予定の60万円をあわせた研究経費を要する。 一方、本学では、SPF環境下での動物飼育施設、P2施設等の設備は整っており、研究に必要なフローサイトメーター、気道過敏性測定機、共焦点顕微鏡、Real-time PCR 解析機、キャピラリー式DNAシークエンサー等の設備も既に本学内で準備されているため、科学研究費補助金を大型機器等、備品の購入にあてる必要は生じない。また研究は、本研究者および本学所属のスタッフと大学院生によって施行されるため、科学研究費補助金を人件費として使用する予定はない。研究成果発表等に必要な旅費も公費を使用する予定であり、科学研究費補助金を使用する予定はない。
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