研究課題
本研究者らは、樹状細胞がIL-23 を産生しTh17 細胞依存的な好中球性炎症を誘導するとともに、Th2 細胞依存的な好酸球性炎症を増強すること(AJRCCM 2008 Wakashin)を報告し、重症喘息における新たな病態機序の可能性を示した。そこで本研究ではアレルギー性気道炎症におけるIL-23産生樹状細胞の誘導機構を明らかにすることを目的とした。真菌感染は重症喘息への関与が知られており、真菌のαマンナンの受容体であるDectin-2はTh17細胞分化を誘導することが報告されている。今回、ハウスダスト抽出物(HDM)を用いた気管支喘息のモデルマウスの解析の結果、CD11b陽性樹状細胞にDectin-2の発現を認めた。Dectin-2欠損マウスでは、アレルギー性気道炎症の減弱とともに、Th2細胞とTh17細胞の分化の減弱がみられた。またDectin-2を欠損した樹状細胞においてIL-23の発現が低下することを示した(Am J Respir Cell Mol Biol. 2014 Norimoto)。さらに、アレルギー性気道炎症における樹状細胞のサブセット解析として、単球由来のinflammatory DCs (iDCs)が気道局所に集積してArginase1を発現していることを明らかにした(Int Immunol. 2014 Iwata)。またHDMはNF-κBを誘導して炎症病態を惹起し、そのシグナル制御にはatypical IkBファミリー蛋白の一つであるIkBNSが重要な役割を果たすことが、樹状細胞においても知られている。今回、血球系細胞においてIkBNSを欠損するマウスにおいてアレルギー性気道炎症が増強することを明らかにした(投稿中)。以上の結果から本研究成果は、難治性喘息における樹状細胞を標的とした新たな治療戦略開発の基盤構築に寄与することが期待される。
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