研究課題
基盤研究(C)
本課題では、当研究室で同定した転写因子Egr2を特異的に発現するCD4陽性CD25陰性LAG3陽性 制御性T細胞(以下、LAG3 Treg)による自己反応性B細胞制御機構の解明を目的とする。EGR2は自己抗体産生を特徴とする代表的難治性自己免疫疾患である全身性エリテマトーデス(SLE)の疾患感受性遺伝子である (Hum.Mol.Genet.19:2313-2320,2010)。このことは、自己抗体産生制御においてEgr2が重要な役割を果たしていることを示唆しており、その制御機構の解明は新規治療法開発の可能性を内包している。平成25年度は下記の検討を行った。1.LAG3 TregによるB細胞制御機構におけるEgr2の機能解析本解析ではT細胞特異的Egr2コンディショナルノックアウト(CKO)マウス(Egr2fl/fl CD4-Cre+)を用いた。Egr2 CKOマウスは、定常状態においても濾胞B細胞、濾胞T細胞の増加、糸球体腎炎などを認め、免疫後の抗体産生も著しく亢進していた。Egr2 CKOマウスへの野生型(WT) LAG3 Tregの移入は、濾胞B細胞、濾胞T細胞分化および過剰な抗体産生を抑制することを確認し、LAG3 Tregによる抗体産生抑制機構がEgr2依存性であることを明らかにした。2.Egr2/Egr3ダブルCKO(DKO)マウス(Egr2fl/f Egr3fl/fl CD4-Cre+)の作製Egr2の機能はEgr familyであるEgr3により補完されることが想定されているが、T細胞におけるEgr2、Egr3の協働作用に関しては不明なままであった。そこで本年は、Egr2/Egr3 DKOマウスを作製しその表現型を解析した。その結果、Egr2/Egr3 CKOマウスにおける濾胞B細胞、濾胞T細胞分化はEgr2 CKOマウスよりも著しく亢進しており、T細胞においてもEgr3によるEgr2機能の補完作用があることが示された。これらの成果は、Egr2/Egr3を介したLAG3 TregによるB細胞制御機構の分子メカニズム解明の重要な足掛かりとなる。
1: 当初の計画以上に進展している
本年度は、Egr2/Egr3 DKOマウスの作製および、その表現型を確認することを計画しており、WT、Egr2 CKOマウスおよび、Egr2/Egr3 DKOマウスを比較検討することで、T細胞におけるEgr2機能をEgr3が補完することを証明し、当初の目標を十分に達成した。上述の検討以外に、Egr2 CKOマウスLAG3 Tregは抗体産生抑制能が減弱すること、また、当研究室で作製したEgr2プロモーター下にGFPを発現するEgr2-GFPマウスのGFP陽性細胞はLAG3 Tregと同様に抗体産生抑制能を有すること等も確認し、LAG3 TregにおけるEgr2の働きを明確にした。更に、Egr2 reporter 'null' alleleであるEgr2-GFP Egr2fl/fl CD4-Cre+マウスを作製し、Egr2-GFP陽性細胞がタンパクレベルでEgr2を発現しないことも確認している。Egr2-GFP Egr2fl/f Egr3fl/fl CD4-Cre+マウスの作製にも成功した。これらのマウスおよびEgr2-GFPマウスより回収したGFP陽性細胞を用いてマイクロアレイ解析を行うことで、LAG3 Tregに関わる制御分子の解明により特異的にアプローチすることが可能となる。以上のことより、実験は当初の計画以上に進展していると考える。
今後は、上述のEgr2-GFPマウス、Egr2-GFP Egr2fl/fl CD4-Cre+マウス、Egr2-GFP Egr2fl/f Egr3fl/fl CD4-Cre+マウスを用いて、LAG3 TregによるB細胞制御機構に中心的な役割を果たす分子を同定する目的でマイクロアレイ解析などを行う。解析の結果得られた候補遺伝子は、LAG3 Tregにおけるタンパクレベルでの発現解析を行うと同時に、retro virus vector を用いた強制発現系にて抑制性因子として機能するか否かにつきin vitroおよび、in vivoの両面から機能解析を行う予定である。
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