研究課題/領域番号 |
25461493
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
岡村 僚久 東京大学, 医学部附属病院, 特任助教 (10528996)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 制御性T細胞 / 自己抗体 / 全身性エリテマトーデス / LAG3 / Egr2 / TGF-β3 |
研究実績の概要 |
本課題では、当研究室で同定した転写因子Egr2を特異的に発現するCD4陽性CD25陰性LAG3陽性 制御性T細胞(以下、LAG3 Treg)による自己反応性B細胞制御機構の解明を目的とする。EGR2は自己抗体産生を特徴とする全身性エリテマトーデス(SLE)の疾患感受性遺伝子である。このことは、自己抗体産生制御においてEgr2が重要な役割を果たしていることを示唆しており、その制御機構の解明は新規治療法開発の可能性を内包している。平成26年度は下記の検討を行った。
1.LAG3 TregによるB細胞制御に関する新規抑制分子の同定:LAG3 Tregを含む各種T細胞サブセットを用いたマイクロアレイ解析より、LAG3 TregがサイトカインTGF-β3を特異的に発現することを同定した。LAG3 TregはTGF-β3をタンパクレベルでも高産生した。LAG3 TregによるTGF-β3産生は、Egr2およびFas発現依存性であった。さらに、SLEモデルMRL/lprマウスの病勢が、養子移入したMRL/+マウス LAG3 TregによりTGF-β3依存性に制御されることも明らかにした。 2.TGF-β3を介したB細胞制御誘導メカニズムの解明:TGF-β3はB細胞のアポトーシス、増殖抑制、抗体産生抑制を強く誘導した。TGF-β3はB細胞における抗アポトーシス因子Bcl-xL発現を低下させ、PD-1欠損B細胞ではこのようなBcl-xL発現低下を認めないという知見を得た。LAG3 TregはPD-1 ligandであるPD-L1を高発現しており、TGF-β3を介したB細胞制御がPD-1/PD-L1相互作用を介していることは合目的的であると考えられた。
以上の知見より、LAG3 Tregによる自己抗体産生制御機構がその抑制分子も含め明らかとなり、新規治療法シーズとしてのTGF-β3の同定に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は、LAG3 TregによるB細胞制御メカニズムの解明を主眼に計画しており、LAG3 TregがEgr2、Fas依存性に、強力なB細胞抑制能を有するTGF-β3を高産生することで、自己抗体産生を抑制することを証明した。さらに、B細胞側の要因としてPD-1発現がTGF-β3感受性を決定することも同定し、LAG3 Tregによる自己抗体制御機構の全体像をT細胞およびB細胞の両側面より明らかにした。以上のことより、計画は当初の目標以上に進展したと考える。
LAG3 TregによるTGF-β3を介した自己抗体産生制御機構に関するこれらの知見は論文として発表し(Nature Communications. 2015 Feb 19;6:6329)、同論文はNature Japanにおいて「注目の論文」に選出され、また、第42回 平成26年度 日本臨床免疫学会においては優秀ポスター賞に選出される等高く評価された。
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今後の研究の推進方策 |
今後はTGF-β3によるB細胞制御メカニズムにつき、シグナル伝達経路を含めた詳細な検討を行う予定である。また、TGF-β1を含めた他のTGF-βファミリーとの相違は今後の検討課題であり、TGF-β1で既に報告されている肝障害、線維化促進などの副作用がTGF-β3においても認められるかどうかについても検討を行う。最終年度はこれらのデータを統合することで、自己抗体産生機序を介する自己免疫疾患に対するTGF-β3を用いた新規治療法開発の礎とする。
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