研究課題
基盤研究(C)
急性肺障害(ALI)では、肺胞中にエラスターゼなどのタンパク質分解酵素が放出され肺組織が損傷し短時間で死に至る。しかしながらエラスターゼ阻害剤はALIに対する効果が低いことが分かっている。慢性、急性によらず、炎症性疾患では重度の組織障害がその症状を悪化させる。好中球より放出されるプロテアーゼはエラスターゼだけでなく、カテプシンGなど、他にも様々な酵素が存在する。また、好中球細胞外とラップ(NETs)がALIなど様々な炎症性疾患に関与することが近年明らかとなってきた。したがって、NETsを阻害し好中球からの顆粒の放出を抑制することで、組織の損傷を防ぐことができると考えられる。ペプチジルアルギニンデイミナーゼ4(PAD4)によるヒストンシトルリン化は、NETsにおいて重要な制御因子であることが報告されている。本研究の目的は、PAD4の阻害によるNETsの抑制が、ALIにおける組織損傷を防ぐかどうか検討し、関節リウマチ等の自己免疫疾患や他の炎症性疾患も含め、PAD4を標的とした治療応用への可能性を明らかにすることである。現在までに、PAD4欠損マウスにおいてLPSの気管内投与による急性肺障害モデルを作成し、肺における炎症性サイトカインの発現を調べた。その結果、IL-6やIL1bなどのサイトカインの発現が野生型に比べ低いことが明らかとなった。また、肺胞洗浄液中のエラスターゼの活性も同様に低いことが示された。これらの結果は、PAD4欠損により好中球からの顆粒の放出が阻害され、肺組織の炎症が抑えられていることを示唆している。
3: やや遅れている
当該年度中に職場を異動したことにより、実験の進行がやや遅れた。
これまでの実験はLPSを用いていたが、他にもブレオマイシン刺激等による肺障害を検討する。また、今後は、PAD4欠損による肺組織の状態を詳細に観察していく。さらに、培養細胞を用いてPAD4による炎症応答の関与を解析する。
想定よりも学会発表等に関する旅費がかからなかった。次年度において、物品費あるいは研究成果発表のための費用として使用する。
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Nature Communications
巻: 5 ページ: 3147
10.1038/ncomms4147
巻: 4 ページ: 1836
10.1038/ncomms2862
Cell Reports
巻: 3 ページ: 1187-1198
10.1016/j.celrep.2013.03.006