研究課題
線維化におけるNFkBのメカニズムを解明するため、我々はIKKβ(NFkB活性化に必須のキナーゼ)を筋線維芽細胞において欠失させたマウス(IKKβΔMF)を作成したところ、皮膚を始めとする様々な臓器の線維化と自己抗体産生を認め、このマウスが新たな線維化・強皮症のモデルマウスとして有用であることを見出した。このマウスを用いて、多くの疾患の病態的基盤である線維化を炎症と自己免疫との相互連関の視点から解明することを目的として研究を行ったが、本年度は以下のような実績を上げた。【PCT国際出願されていた特許の各国移行】本マウスは線維化・強皮症モデルマウスとして京都大学が知的財産権を継承し、2012.11.1米国特許仮出願、2103.11には科学技術振興機構・知的財産戦略センターによる外国特許出願支援制度を受けてPCT国際出願を行っていたが、2015年3月には上記センターにより日本に加えて欧米4か国(アメリカ・イギリス・ドイツ・フランス)各国移行の支援も決定した。【本マウスにおける線維化分子メカニズムの解明】メカニズムを解明するため、我々は筋線維芽細胞においてIKKβのkinase-deadが過剰発現したマウスを作成したところ、IKKβノックアウトマウスにおいて認められた線維化及び自己抗体の表現型がrescueされることを見出した。このことは本ノックアウトマウスの表現型がIKKβのkinase活性依存的役割の喪失によるものではなく非依存的役割の喪失によるものであることを示しており、IKKβのkinase活性非依存的役割の線維化における働きが重要であることが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
科学技術振興機構・知的財産戦略センターによる支援を受けて、日本に加えて欧米4か国(アメリカ・イギリス・ドイツ・フランス)各国移行することになったことは、産官学連携の広がりのみならず今後の研究発展にとって非常に大きな成果であると考えられた。またメカニズム解明においてIKKβのkinase活性非依存的役割がin vivoで明らかとなったのはこれが初めてであり、しかもそれが線維化に大きな役割を呈していることは今後の線維化メカニズム解明において寄与するところ大であると考えられる。
IKKβのkinase活性依存的役割により焦点を当て、その直接的な作用ターゲット分子の探索を行うことにより、線維化の新たなメカニズム解明を行う。また、Tリンパ球 and/or Bリンパ球が欠損したマウスと交配や骨髄移植実験などを行うことにより、線維化における免疫の関与を明らかにする。
線維化メカニズム解明においてIKKβのkinase活性依存的役割が明らかになるなど全く新しい展開があり、そちらに研究労力・時間が費やされたため、大動脈縮狭窄モデルなどの疾患モデルマウス作成が遅れたため、その実験に消費される予定の経費が次年度使用額として生じた。
予定されていた疾患モデルマウス作成とその解析のために使用する。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 2件)
Scientific Reports
巻: 4 ページ: 5094
10.1038/srep05094