研究課題
マウスのES細胞に免疫抑制性分子であるTRAILやIL-10の遺伝子をNeomycin(Neo)やPuromycin(Puro)の薬剤耐性遺伝子とつなげた発現ベクターを電気穿孔法で遺伝子導入し、高濃度のNeoやPuroで選別し、その後、FACSやELISAなどでタンパク質の発現量の高いものをクローニングしていた。これらの免疫抑制性分子を高発現するES細胞をin vitroで樹状細胞(ES-DC)に分化誘導した。TRAILを遺伝子導入したES細胞はDCに分化誘導できたが、IL-10を遺伝子導入したものは細胞増殖が悪くDCへの分化も不良であった。筋炎のマウスモデルであるC蛋白質誘導性筋炎(CIM)を用いた実験を行うためにC蛋白質以外の筋に高発現する蛋白をマイクロアレイの結果などをもとに検討するも発現の特異性や遺伝子の大きさなどから適切な候補がなかった。実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)の誘導については、高頻度で用いられるミエリンオリゴデンドロサイト糖蛋白質(MOG)以外にもミエリン塩基性蛋白質(MBP)やプロテオリピド蛋白質(PLP)などが知られており、これらでEAEの誘導を行ったところ、MBPでEAEを安定して誘導できた。このため、TRAILを遺伝子導入したES細胞にMOGペプチドを遺伝子導入して、DCに分化誘導して、このTRAILとMOGを発現するES-DCをマウスに投与したところ、MOGによるEAEのみならずMBPによるEAEの発症を抑制した。しかし、無関係な抗原であるOVAとTRAILを遺伝子導入したES-DCはMBPによるEAEを抑制できなかった。また、この免疫抑制には制御性T細胞が関与していることが観察された。以上のことから、TRAILと組織抗原を高発現するES-DCにより組織特異的な免疫抑制療法を行うことができる可能性が示唆された。
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