研究課題
ダブルコールドトラップ法を用いた呼気VOC測定システムの手法について論文化し、Adv Biomed Eng誌にアクセプトされた。実際にこの手法を用いて呼吸器疾患患者(肺癌、睡眠時無呼吸症候群)について呼気VOC濃度を検討し、その有用性を確認できたので現在論文投稿中である。喘息患者についてもこの手法を用いて解析を進めていたが、入院患者を対象として行われた肺癌、睡眠時無呼吸症候群患者での検討と異なり、主に外来患者を対象とした検討となっており、測定手技の効率化が必要となった。そこで以下の様な測定システムの改良を行った。1)大気中のVOCを除去するための純化空気を作成する手法としてガスマスク用のフィルターを利用することにより、大幅に時間短縮が可能となった、2)呼気VOCを吸着するための素材としてグラスウールを用いていたが、注射針の中に固体吸着剤を組み込んだNeedleExを用いることで直接GC・MSにサンプルを注入できるようになり、測定の迅速化と再現性の向上がえられるようになった。ただし、これらの測定手順の変更にともない、アセトンとイソプレンの測定値に大きな変動があり、この原因を検討した。その結果、呼気保存用バッグに呼気を保持する時間によりこの2つのVOC濃度が大きく変動することが明らかとなった。従来は呼気採取から測定までの時間が半日程度あったため、濃度の変動が少なかったと思われる。この問題に関しては呼気採取後30分以内に測定することで解決できた。現在、測定は順調に進んでおり、2015年9月末までには合計150症例の測定が終了予定である。呼気凝縮液のリピドミクス解析についても、理化学研究所の解析システムを用いて従来の報告があるPGE2・PGD2・5-HETE・12-HETE・15-HETE・AA・EPAの測定が可能であることを確認した。その他の脂質についての検出感度を上げるため、回収率・濃縮率を高めるための検討を実施中である。
2: おおむね順調に進展している
呼気中VOC濃度の測定については、サンプリング・測定系の改良によって1日に多数検体の処理が可能となり、専任の研究補助員(週1回)を平成27年3月から雇用したこともあり、順調に測定が進んでいる。最終年度である平成27年9月末までには目標症例数の測定が終了見込みである。また、測定系の改良は今後の臨床応用にも大きな前進であると考えている。呼気凝縮液のリピドミクス解析については、従来の報告レベルの解析は十分可能であるが、より微量の脂質代謝物を測定するためにもう少し測定系の改良が必要である。併行して試料の収集は進んでおり、予定通りの測定が最終年度内にできる見込みである。
呼気中VOC濃度の測定については、専任の研究補助員(週1回)を平成27年9月までの半年間雇用し、目標症例数である150症例の測定を終了させる。平成27年4月の段階で30例の測定が終了しており、月20-30症例の測定が行われていることから、10月初旬には目標症例数のデータが揃う見込みである。中間データ解析を行い平成28年4月の日本呼吸器学会で発表するとともに、最終データ解析の結果の論文化を進める。呼気VOC解析については引き続き連携研究者の理化学研究所 有田博士とともに研究を遂行する。試料収集の迅速化のため、連携研究者の慶應義塾大学 福永博士とも連携を取り、重症喘息コホートからのサンプル収集を併行して行う。
平成26年度は測定法の改良に重点を置いたため、実際の試料収集はそれほど必要なく、そのために次年度に繰り越しとなった。
専任の研究補助員(週1回)を平成27年9月までの半年間雇用して、研究を促進させるために人件費の支出がやや多くなる見込みである。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 2件)
Allergol Int
巻: 64 ページ: 175-180
http://dx.doi.org/10.1016/j.alit.2014.07.003
Adv Biomed Eng
巻: 未確定 ページ: 未確定
J Allergy Ther
巻: 5 ページ: 173