研究課題
ダブルコールドトラップ法を用いて呼気VOC濃度を検討してきたが、主に外来患者を対象とした喘息での解析にあたり、ガスマスク用フィルターと注射針の中に固体吸着剤を組み込んだNeedleExを用いることで、測定の大幅な迅速化と再現性の向上がえられた。このプロトコールを用いて12種類の呼気VOC濃度を健常成人19例、喘息患者28例(軽症~中等症10例、重症18例)について測定を行った。併せて疾患コントロール群として睡眠時無呼吸症候群患者19例についても同様の検討を行った。その結果、3種類の呼気VOC(ベンゼン、キシレン、ノナン)について、喘息群で健常成人あるいは睡眠時無呼吸症候群患者と比較して有意な濃度上昇が確認された。この濃度上昇は特に重症喘息患者で顕著であった。以上より、呼気VOC濃度は喘息患者、特に重症喘息患者で上昇することが明らかとなった。しかし呼気VOC濃度には個体差が大きく、また健常人と喘息患者との弁別能は低いことから、さらなる検討が必要と考えられた。今回の研究はメタボロミクス解析を用いた新規バイオマーカー探索が主たる研究目的であったが、既知のバイオマーカーであるペリオスチンについての解析も併せて実施した。喘息患者190例での血清ペリオスチン中央値は健常人と比較して有意に高値であったが、重症度と血清ペリオスチン値に有意な関連はなかった。重症喘息患者を血清ペリオスチン値に基づき3群に分類したところ、血清ペリオスチン高値の患者は成人発症、好酸球性炎症優位、鼻合併症、低肺機能などの特徴を呈する喘息の臨床像と関連することが示唆された。一方、吸入ステロイド量や内服ステロイド使用率、ACTスコアやQOLスコアには血清ペリオスチン値による有意差は認めなかった。ペリオスチン濃度はステロイド治療によっても変動が少ないとされ、喘息のコントロール状態や重症度ではなく、病型を反映するバイオマーカーであると考えられた。
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Annual Review 2016 呼吸器
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