研究課題/領域番号 |
25461505
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
布村 聡 佐賀大学, 医学部, 助教 (70424728)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | マスト細胞 / アレルギー / IgE受容体 |
研究実績の概要 |
高親和性IgE受容体(FcεRI)を介したマスト細胞の活性化は,気管支喘息や花粉症などのI型アレルギーの発症に係わることが知られています。今日,先進工業国におけるアレルギー疾患の発症率、罹患率は,著しく増加している現状から,その症状をコントロールする優れた管理法の学術的,社会的意義はきわめて大きく,本研究の目標は, FcεRIの機能を制御する新たな手法を開発し,I型アレルギー疾患に対する予防戦略の新展開を目指す点にあります。
平成27年度は,FcεRI架橋の強さに応じた正と負の双方向性の活性化制御における,FcεRIγ鎖ホモダイマー間のS-S結合の重要性ついてさらに詳細な解析を行いました。その結果,FcεRIγ鎖のS-S結合部位に変異が導入されたFcεRIも,野生型のFcεRIと同様に,IgE感作によるFcεRI発現増強が誘導されました。しかしながら,2)弱いFcεRI架橋時のFcεRIのInternalizationは,野生型のFcεRIと比較して有意に減弱していることを突き止めました。またMultiplex Cytokineアレイによる網羅的な解析により,S-S結合部位に導入された変異が,FcεRI刺激によるサイトカイン産生パターンにおよぼす影響により,3つのタイプに分類できることを明らかにしました。すなわち1)高価数の抗原により刺激された場合にのみ,産生能が亢進するタイプ(IL-1β),2)低価数と高価数どちらの抗原においても産生能が亢進するタイプ(MIP-1β,IL-17),3)低価数と高価数どちらの抗原においても産生能が減弱するタイプ(IL-2,GM-CSF)となりました。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,当初の計画通りにFcεRIγ鎖ホモダイマー形成におけるS-S結合が,1)IgEによるFcεRI発現増強機構には必須ではないこと,2)Internalizationには正の調節因子として機能すること,3)サイトカイン産生では,サイトカインの種類により正と負の活性化調節の受け方に違いがあることを網羅的解析により,明らかにすることができたためおおむね順調に進展したと判断しました。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,FcεRIγ鎖ホモダイマー形成におけるS-S結合の欠失が,FcεRI架橋時におけるFcεRIβ鎖およびγのチロシンリン酸化状態におよぼす影響について解析を進めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の進行自体に大きな問題は無かったが,所属機関を異動したために成果の公表(論文の投稿・学会発表)の準備に遅れが生じたため
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次年度使用額の使用計画 |
学会での研究成果の発表に掛かる経費,国際論文へ投稿するための投稿料,掲載料,英文校正に使用します。また投稿した論文の査読者から追加の実験を要求された場合には,実験に必要な消耗品の購入費に充てる予定です。
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