研究実績の概要 |
HSV母子感染の2つの症例で、児由来ウイルスはある遺伝子に特定の変異があることを見出したので、マウスでの感染実験で両ウイルス株の病原性の比較を行った。 臨床分離されたHSV-2のリン酸化酵素をコードする遺伝子にフレームシフトを引き起こす変異(G96A fsX5、 W30X、 A142P fsX25、 Y162V fsX141)を有する株と、アミノ酸置換(V165M、V175M、D231Y、Y384C)を有する株を網羅的塩基配列解析の結果見いだした。それらの内、フレームシフトの株(G96A fsX5、A142P fsX25、Y162V fsX141)と、アミノ酸置換のV165Mの病原性をマウス皮膚病変モデルで検討した。マウスBALB/c 8週令の側腹部を除毛後、注射針による擦過傷に各濃度のHSV-2(500,000, 100,000, 10,000 PFU / 5uL)を感染させ、病変の進行を観察した。いずれのウイルス株も10,000 PFU では殆ど病変を生じさせなかった。しかしながら、100,000 PFU 以上のウイルス量を感染させた場合では、リン酸化酵素の変異株(G96A fsX5を3株、 A142P fsX25を1株、Y162V fsX141を1株)の3種類のフレームシフトの株はいずれも変異のない株に比べて病原性が有意に低下していた。一方でアミノ酸置換のあった1株(V165M)は病原性低下が認められなかった。
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