研究実績の概要 |
アメリカの新生児ヘルペス患者26名から分離されたHSVのUL13ORFに遺伝子変異を検出した。そこでこれらの変異株のマウスにおける病原性の解析を行った。UL13遺伝子にフレームシフトを引き起こす変異株(G96A fsX5,A142P fsX25,Y162V fsX141)と、アミノ酸置換の変異株(V165M)を、マウスBALB/c 8週令の側腹部を除毛後、各濃度(500,000、100,000、10,000 PFU / 5uL)で感染させ、病変の進行を観察した。 いずれのウイルス株も10,000 PFU では殆ど病変を生じさせなかった。しかしながら、100,000 PFU 以上のウイルス量を感染させた場合では、UL13遺伝子の変異株(G96A fsX5,A142P fsX25,Y162V fsX141)の3株は、変異のない株に比べて病原性が有意に低下していた。一方でアミノ酸置換の1株(V165M)は病原性低下が認められなかった。 プロテオーム解析により、母由来ウイルスと児由来ウイルスの感染細胞で発現量に違いがある宿主蛋白質を複数個同定し、感染細胞内での発現と修飾とHSV増殖における役割を検討した。 eukaryotic elongation factor 1 deltaは2つの異なる分子量のバンドが検出され、HSV感染3~6時間ではUL13遺伝子の欠損の有無で差は認められなかった。しかしながら、感染後9~12時間ではリン酸化酵素を有するウイルス感染で、2つのバンドの分子量が共に増大した。一方で、ht-nuclear ribonucleoprotein-κはウイルスの感染で発現タンパク質の減少が見られたが、リン酸化の修飾による分子量の変動は確認できなかった。これらの結果から、HSVのリン酸化酵素が、感染細胞内で転写に関する酵素を制御している可能性が示唆された。
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