研究課題
基盤研究(C)
ベトナム(ハノイ国立がん病院)において、189名の子宮頸癌患者から子宮頸部バイオプシー検体を採取した。これらの組織からゲノムDNAを抽出し、HPV L1領域を増幅した後、HPV遺伝子型を決定した。また、分離されたHPV16株とHPV52株のE6・E7遺伝子領域を型特異的プライマーにて増幅、塩基配列・アミノ酸配列を決め、E6・E7亜型を決定した。結果は以下のようにまとめられる。1. 189例中169例(89.4%)にHPV DNAが検出された。HPV DNA陽性検体の26.6%に複数のHPV型が検出された。219のHPV株が分離され、12の遺伝子型が検出された。 2. HPV16/HPV18が子宮頸癌患者の94.7%(169例中160例)に検出されたが、子宮頚部細胞診正常者間で最も高頻度にみられたHPV52型は4.7%に検出されたのみであった。 3. 子宮頸癌患者では、HPV16 E6/E7亜型の中で、ヨーロッパ・アジア型が80.2%、ヨーロッパ・プロトタイプ13.9%、アジア・アメリカ型5.0%、アフリカ型0.9%であった。(一方、子宮頚部細胞診正常者では95.7%がヨーロッパ・アジア型であった。) 4. 子宮頚部細胞診正常者では、HPV16 E6 D25E単独/E6 D25E+E7 N29S: 13.7%/86.3%であったのに対し、子宮頸癌患者ではE6 D25E単独/E6 D25E+E7 N29S:43.8%/55.1%であった。以上より、ベトナムでは、子宮頚部細胞診正常者間で流行しているHPV株と子宮頸癌患者でみられるHPV株の遺伝子型が異なること、そしてHPV16/HPV18を対象とした現行ワクチンが約95%の子宮頸癌予防に有用であることが示唆された。また、HPV16 E6 D25EにE7 N29S変異が加わると発癌に抑制的に働く可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
ベトナムのがん患者からの検体採取(200検体以上、解析可能な検体数189検体)とHPV分子遺伝子解析がほぼ終了し、現在論文作成を開始している。今年度の研究により、ベトナムでは、子宮頚部細胞診正常者間で流行しているHPV株と子宮頸癌患者でみられるHPV株の遺伝子型が異なること、HPV16/HPV18を対象とした現行ワクチンが約95%の子宮頸癌予防に有用であること、そして、HPV16 E6 D25EにE7 N29S変異が加わると発癌に抑制的に働く可能性が明らかになった。
日本の子宮頸癌患者から検体採取を行ない、ベトナムと同様にHPV分子遺伝子解析を行なう。また、フィリピンの子宮頸癌患者の検体採取に向け、現地の専門家と詳細を詰め、倫理委員会への申請を行ない、がん患者からの検体採取を開始する。平成27年度前半までに全ての解析を終了し、論文作成を行なう。
他の物品が予想より安く購入できたため、端数が生じた。次年度、消耗品として使用する予定である。
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http://virus.w3.kanazawa-u.ac.jp