高齢者における感染抵抗性の低下や悪性腫瘍の罹患率の増加から、加齢に伴う自然免疫系の活性の変化が予測される。しかし、特に発達段階での自然免疫関連遺伝子の発現の変化は詳細には報告されていない。クローン病やサルコイドーシス等の肉芽腫形成疾患は加齢に伴う症状の変化が報告されているため、加齢に伴う自然免疫系遺伝子発現の変化が病態に影響することが想定される。このため発達段階での自然免疫関連遺伝子の発現を解析することで、肉芽腫形成疾患の病態解明と新規治療法開発に結びつけることを目的とした。遺伝子はインフラマソーム構成因子と自然免疫因子とその活性制御因子を解析した。生後3ヶ月と8ヶ月のマウス(青年期と老年期に相当)の肝臓、肺、リンパ節、脾臓、骨髄、腸間膜リンパ節の各臓器からmRNAを抽出し、RT-PCR法により遺伝子発現量を比較定量した。解析した遺伝子で発現に有意差を示したものは、加齢に伴って遺伝子発現低下を示したものが多かったが、逆に増加を示す遺伝子群も認められ、複雑な遺伝子発現制御機構が存在することが示唆された。特に免疫複合体インフラマソームを形成する3種の因子については、特に協調的な遺伝子発現を認めなかった。自然免疫系のなかで大きく2群を形成するTLR関連遺伝子群とNLRP関連遺伝子群については、異なる遺伝子発現パターンを認めた。この解析から、肉芽腫形成疾患の加齢の伴う症状の変化が自然免疫系遺伝子の発現変化に依る可能性を明らかにした。今後は変化した遺伝子発現を補正することにより、新規治療法開発に結びつけることを検討する。
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