研究課題
A.研究目的:ムーコル症(接合菌症)の診断は、病理組織学的検査や真菌培養同定でなされるが、基礎疾患が不良で侵襲的な検査が困難な場合も多い。ムーコル症に特異的な血清診断は実用化しておらず、感度・特異度の高い検査法の開発が期待されている。我々はシグナルシークエンストラップ法を利用し、新規抗原を選定。その後、モノクローナル抗体を開発してムーコル抗原検出キット(ELISA)を作成した。前年度までに候補A抗原はR. oryzae、R. microspores、R. microspores var. rhizopodiformis培養上清中およびそれらの感染マウス血清中からも検出された。さらに感度や特異度を向上させるために検出法の条件を見直した。B.研究方法:ELISA法条件の変更:ELISAプレートおよびブロキングバッファー、抗体の希釈濃度を変更して条件を検討。サンプル精製条件の検討:適正な血清濃度を検討した。患者血清による検討:肺真菌症が疑われ、抗真菌薬が投与された症例の血清を使用して、ELISA法により候補A抗原の検出を試みた。C.研究結果:ELISA法条件の変更:ELISAプレートおよびブロキングバッファー、抗体の希釈濃度を変更し、候補A抗原を検出する感度を変更することに成功。サンプル精製条件の検討:血清濃度が1~20%の範囲では、測定結果への影響はほとんど認められないことが判明。患者血清による検討:深在性真菌症が疑われ、抗真菌薬が投与された14症例の中で1症例のみが陽性に検出。本症例は、急性リンパ性白血病にて末梢血幹細胞移植を受け、発熱を主訴に来院。右上葉に浸潤影が認められた。広域抗菌薬および抗真菌薬(CPFG)にて治療が開始されるも改善傾向を認めず、抗真菌薬をCPFGよりL-AMBへ変更し、改善が認められた。喀痰よりムーコル属が検出され、肺ムーコル症と診断した。
3: やや遅れている
ムーコル症(接合菌症)は、稀な疾患であり、実際の検体を得られる機会は少ないことが、理由の一つである。
新規診断キットのヒト検体を用いた評価を進めるために、共同研究者や血液内科スタッフとも連携を強化し、検体を集めて研究を推進する。
新規診断キットの感度・特異度を高めるための再評価を行ったため、当初より計画が遅れている。さらにムーコル症(接合菌症)は稀な疾患であり、そのヒト検体収集に時間がかかっている。
臨床検体を集めて、新規診断キットの評価を行う。感染動物実験も実施する。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件、 謝辞記載あり 4件)
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