研究課題
肺炎は現在本邦での死因の第3位であり増加傾向にある。我々は、簡便で迅速な遺伝子増幅検査法であるリアルタイムPCR法を用いた結核およびその他の肺炎の簡易迅速確定診断・薬剤耐性判定システムの構築とその地域医療への応用を目指しており、この系が作成できれば、より迅速に低コストで肺炎の鑑別診断と薬剤耐性の有無の推定が可能となり、地域の高齢化・医療過疎化の中でのより効率的な結核・呼吸器疾患コントロール対策モデル作りに繋がると考えられる。初年度の平成25年度と平成26年度には、呼吸器感染症の原因となる主なウイルスと細菌の検出が可能なTaqManマルチプレックス・リアルタイムPCR法の系を一般市中病院の検査室に導入した。結核性肺炎に対してもDNAシーケンシング法を用いた迅速薬剤耐性判定システムを構築した。このように地域医療における臨床診断業務に寄与すると同時に、診断系の作成のために必要な病原体サーベイランスと遺伝子配列情報の解析を行った。最終年度である平成27年度にはマルチプレックス・リアルタイムPCR法の系をさらに拡充して24種類のウイルスと13種類の細菌を検出できるようにし、肺炎のさらに詳しい病態解明に努めている。例えば本年度は小児・成人のマイコプラズマ肺炎が多発し、我々が開発したマルチプレックス・リアルタイムPCR法の系での迅速診断と、Cycleave法を用いたリアルタイムPCR法による迅速薬剤感受性検査により検体到着後3時間程度でマクロライド耐性の有無を判定可能であった。結核診療においても抗酸菌同定のためのマルチプレックス・リアルタイムPCRのシステムを導入し、結核および現在増加傾向にある非結核性抗酸菌症の診断に応用している。このように肺炎の総合的な迅速診断の系を作成することができ、実臨床における有用性も示すことができた。今後はこれらの系を用いてさらに詳しい肺炎の病態解明に努めたいと考えている。
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J Infect Chemother
巻: 22 ページ: 143-148
10.1016/j.jiac.2015.12.004