研究課題
近年、多剤耐性菌であるニューデリーメタロベータラクタマーゼ(NDM)産生菌の伝播は深刻であり、インド/パキスタン地域から全世界に及んでいる。我が国でもNDM産生多剤耐性菌が検出されており、その伝播のスピードは著しい。本酵素産生菌の最大の問題点は、既存のベータラクタム系抗菌薬のほとんどを分解する多剤耐性菌であるという点である。同時に多くの抗菌薬耐性因子(コリスチン耐性因子MCR-1、アミノ配糖体系抗菌薬耐性因子 ArmA、RmtC、RmtB)を発現していることも多い。そのためこれらの菌による感染症が起きた場合、治療に難渋することが予想される。本研究では抗菌薬の殺菌性に注目されるだけでなく、NDM-1自体の活性を阻害することによる新な治療法を提案することを目的とした。研究者はこれまでにCa-EDTAおよびカルバペネム抗菌薬のIn-Vitroでの併用効果についての検討を行い、抗菌薬単剤の場合と比較し、Ca-EDTA併用条件下では大幅な改善が認められたことを明らかにした。(imipenem 512mg/L, imipenem/Ca-EDTA 2mg/L)。さらにNDM-1産生菌によるマウス(BALB/c)敗血症モデルを確立し、このモデルを用いてCa-EDTAとカルバペネム系抗菌薬の併用効果を血中、肝臓内生菌数を指標に検討した。その結果、抗菌薬単剤投与群に比べて併用群では、有意差を持って生菌数が10倍現象していた。これらの結果は2013年にJournal of Infection and Chemotherapyに掲載された。また予備実験のレベルではあるが、異なるマウス(C57BL/6)モデルを用い同様の実験を行った結果でも、併用効果が見られた。同様に炎症性サイトカインへの併用効果の影響を確認すべく、IL-6を指標に検討を行ったところ、C57BL/6モデルの併用群でIL-6の低下傾向がみられた。今後マウスの母集団を増やし、さらなる確認実験を行う予定である。
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