研究課題/領域番号 |
25461528
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
白土 東子 (堀越 東子) 国立感染症研究所, ウイルス第二部, 主任研究官 (60356243)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ノロウイルス / 血液型抗原 / 診断 / 検出 |
研究概要 |
ノロウイルス(NoV)は小腸上皮に発現する糖鎖抗原である血液型抗原を識別して感染する宿主を決めている。本研究課題ではNoV全33遺伝子型が認識する共通糖鎖エピトープを少なくとも1種類同定し、全遺伝子型に対応可能な診断方法、検出方法の確立を目指す。本研究課題によって得られる糖鎖上のエピトープの情報、ウイルス上の結合ドメインの情報は、血液型抗原に結合するというNoV共通の性質を利用した全遺伝子型に対応可能な診断方法、検出方法の確立につながる。 1) 赤血球凝集反応試験のNoV診断への応用の試み。ウイルス様中空粒子(VLP)の血液型抗原認識が、生ウイルスのそれと同じであることを確認するため生ウイルスとVLPとの結合能の比較を赤血球凝集反応試験を用いて行う。今年度は、試験に用いる18遺伝子型24株のVLPの大量調製および精製を行うとともに、糞便からの生ウイルスの精製方法の検討を行った。数検体の患者糞便から生ウイルス粒子の精製を試み、2検体から電子顕微鏡で確認できる程度のウイルス粒子を精製することが出来た。 2) エネルギー成分解析と分子動力学計算によるNoVの血液型抗原認識機構の解析。NoVの血液型抗原認識機構の詳細を明らかにするため、ウイルスタンパク質-糖鎖間相互作用を、結晶構造を基にしたQM/MM計算によるエネルギー成分解析と分子動力学計算によるダイナミクス解析により評価した。血液型抗原のひとつであるルイス抗原とNoVとの複合体結晶構造を基にQM/MM計算による構造最適化を行い、水素原子を付加した安定化モデル構造を得ることができた。さらに、複合体の相互作用エネルギーの見積もりを行い、ルイス抗原結合部位周辺のアミノ酸変異が容易にルイス抗原結合パターンに影響することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1) 赤血球凝集反応試験に用いる18遺伝子型24株のVLPの大量調製および精製が順調に進行している。糞便からの生ウイルスの精製に関しても、電子顕微鏡で確認できる程度のウイルス粒子を精製することが出来た。 2) ルイス抗原とNoVとの複合体結晶構造を基にQM/MM計算による構造最適化を行い、水素原子を付加した安定化モデル構造を得ることが出来た。さらに、複合体の相互作用エネルギーの見積もりを行い、ルイス抗原結合部位周辺のアミノ酸変異が容易にルイス抗原結合パターンに影響することを明らかにすることが出来た。ウイルス上の糖鎖結合ドメインの情報は、本研究課題で目指す「血液型抗原に結合するというNoV共通の性質を利用した全遺伝子型に対応可能な診断方法、検出方法の確立」につながる。
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今後の研究の推進方策 |
研究開始時に予定していた「ウイルスアミノ配列の比較解析による糖鎖認識特異性と連動しているアミノ酸の割り出し」に加え、今後は、「相互作用エネルギーの見積もりによる糖鎖結合部位周辺ウイルスアミノ酸変異が結合パターンに与える影響の解析」を行う。ウイルス上の糖鎖結合ドメインの詳細な解析は、本研究課題で目指す「血液型抗原に結合するというNoV共通の性質を利用した全遺伝子型に対応可能な診断方法、検出方法の確立」に必須の情報である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度に予定していたBiacore Flexchipによる解析系の立ち上げがスポッターのトラブルにより叶わず、平成26年度に繰り越すことにした。代わりに、平成25年度は平成26年度以降に予定していた赤血球凝集反応試験の立ち上げを行った。次年度使用額となった271,291円はBiacore Flexchipのセンサーチップ購入費にあてる予定であった分である。 平成26年度は、270,000円をBiacore Flexchipのセンサーチップ購入費にあてる。Biacore Flexchipによる解析系の立ち上げとBiacore 2000との併用を実現することによって、網羅的かつ詳細な結合活性の解析が可能となり、本研究課題で目指す「糖鎖エピトープの同定」に繋がる。
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