ノロウイルスは小腸上皮に発現する糖鎖抗原である血液型抗原を識別して感染する宿主を決めている。本研究課題ではノロウイルス全33遺伝子型が認識する共通糖鎖エピトープの同定を目指し、全遺伝子型に対応可能な診断方法、検出方法の確立を目指した。糖鎖上のエピトープの情報、ウイルス上の結合ドメインの情報は、血液型抗原に結合するというノロウイルス共通の性質を利用した全遺伝子型に対応可能な診断方法、検出方法の確立につながる。 ノロウイルス粒子の便への排出量は決して多くなく、解析に十分なウイルス粒子の調製は困難である。そこで、ウイルス様中空粒子(Virus-like particle: VLP)の調製が有用である。本研究課題において、18遺伝子型25株のVLPを用い、Surface Plasmon Resonance(SPR)機器を用いた糖鎖-ウイルス相互作用の解析系、赤血球および糖転移酵素遺伝子改変細胞を用いた糖鎖-ウイルス相互作用の解析系を確立を試みた。次にこれらの解析系を用いて、ノロウイルスの糖鎖認識に最も重要な糖鎖エピトープの同定、ウイルス上の糖鎖結合ドメインの同定を目指した。 その結果、遺伝子型毎の糖鎖認識パターンとウイルスアミノ配列の比較から、糖鎖認識の特異性と連動しているアミノ酸の割り出しを行うことが出来た。また、解析に用いた18遺伝子型以外の15遺伝子型に関してもアミノ配列の解析を行い、全33遺伝子型に共通の糖鎖結合ドメインの候補配列を絞り込むことが出来た。
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