研究課題
これまで、次世代シークエンサー(NGS)を用いて、PCR産物を用いたディープシークエンス、総RNAを鋳型に用いたメタゲノム解析の条件設定を行い、実際の事例を用いて解析を行ってきた。本年度は、病因との関連を明確にするために、複数のNoVの遺伝子型が検出され因果関係が不明な集団胃腸炎事例について、NGSを用いたメタゲノム解析を行ったところ、ダイレクトシークエンスではNoVが検出されなかった検体からも、メタゲノム解析ではNoVの遺伝子型が検出され、遺伝子型と発症との因果関係が推定できる事例のあることが判明した。一部の事例では、メタゲノム解析に加えてディープシークエンス解析を行ったところ、メタゲノム解析では検出されなかった遺伝子型が検出されたため、単一の遺伝子型の暴露と思われる事例でも、実際は複数の遺伝子型の感染の可能性もあることが推定された。カキ喫食事例では、複数のNoV遺伝子型のほか、SaVやアイチウイルスの遺伝子も検出され、カキに含まれた複数種のウイルスへの暴露を反映していると考えられた。平成25年度にSaV GV.2ゲノムが検出された事例を、リード数の多い解析キットを用いて再解析したところ、総リード数の約0.0074%のSaVのリードが得られ、重複するリード間に配列の相違は認められなかった。検出されたSaVのリードの総塩基数は7,373塩基に渡り、参照配列のほぼ全長(98.0%)をカバーすることが判明し、解読リード数の多いキットを用いる利点が確認された。以上から、NGSを用いてメタゲノム解析を行うことにより、遺伝子型の多様性と病因との関連を検討することは可能であることが判明したが、個々のリードに認められる塩基配列の多様性を検討するための十分なリード数を得ることが困難であったため、塩基配列の多様性と病因との関連を議論することはできなかった。
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