研究実績の概要 |
2012年、自閉症にてんかんを合併する症例において分岐鎖ケト酸脱水素酵素キナーゼ;(BCKDK)に障害があることが報告された(Novarino G, et al. Sicence 338:394-397, 2012)。BCKDK欠損症での他の自閉症・てんかん症候群にはない特徴として、罹患者およびモデルマウスの血中アミノ酸プロファイルにおいて分岐鎖アミノ酸(BCAA;具体的にはバリン、イソロイシン、ロイシン)の著明な低下を呈することが報告されている。BCKDK欠損症患者でこのような特徴的な血中アミノ酸プロファイルを呈することは、生化学的にスクリーニングができることを意味する。今回の研究は、新生児マススクリーニングのデータを用いてBCKDH欠損症できる可能性があるか、できた場合に確定診断のありかたに関して検討することを目的とした。 1) 生化学的スクリーニング系の確立 「新生児マススクリーニング集団」に関してH25年度(29957件)、H26年度(38432件)、H27年度(H28年1月まで;32222件)のロイシン+イソロイシンを検討した。上記値が30 nmol/L以下がH25年度 2件、H25年度 1件、H27年度0件であった。いずれも低出生体重児であり、再検にて回復していたため、栄養性の低下と考えられた。 タンデムマススクリーニングにロイシン+イソロイシンの指標を導入することにより、スクリーニングができる可能性が示唆された。 2) BCKDK欠損症の遺伝子診断系の確立 従来型のサンガー法による、ダイレクトシークエンスによる診断系を確立した。そのうえで、臨床的に低血糖時に低BCAA血症をきたした自閉症類似症例を解析したが、変異はなかった。その後の経過観察・食事指導で低BCAA血症が改善したため、栄養性のものと判断した。包括的診断系は全遺伝子のエクソーム解析にて検討している。
|