研究実績の概要 |
先天性大脳白質形成不全症は,大脳白質のミエリンの先天的形成不全(髄鞘化障害)による白質病変を呈する疾患群であり、頭部MRIのT2強調画像で,大脳白質に高信号を認める。本研究では平成26年度末までに29例(男性22名,女性7名)を収集し、染色体G分染法,染色体高精度分染法,アレイ比較ゲノムハイブリダイゼーション(array comparative genomic hybridization; アレイCGH),既知病因遺伝子のスクリーニング,そして次世代シーケンサーを用いた全エクソームシーケンス(whole-exome sequencing; WES)の遺伝学的検査を施行した。解析の結果、現時点で対象29例中19例(65.5%)で分子生物学的異常を指摘しえた。Pelizaeus-Merzbacher病と18q-症候群が最多で,それぞれ11%であった。アレイCGHでは,EIF2B2遺伝子欠損および15番染色体長腕のヘテロ接合性喪失が同定された。甲状腺機能異常を有する症例および頭蓋内石灰化を伴う症例における病因遺伝子のサンガー法で,それぞれSLC16A2およびTREX1遺伝子の変異が判明した。WESでは,6遺伝子(TUBB4A, POLR3B, KCNT1, AHDC1, MCOLN1, 新規候補遺伝子X),計8症例に病的意義を有すると考えられる変異を認めた。うち7変異がこれまでに報告されていない新規の変異であった。新規の疾患候補遺伝子Xは細胞質内tRNAのミトコンドリア内への輸送に関与することが分かっている。本年度はその機能解析のため、まずウエスタンブロットにて患者の線維芽細胞における蛋白発現がコントロールに比して優位に低下していることを確認できた。現在患者の線維芽細胞を用いたATP測定や、変異遺伝子を正常の線維芽細胞に導入してATP測定を行うなどさらなる機能解析を進めている。
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