研究課題/領域番号 |
25461534
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
宗形 光敏 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 非常勤講師 (30312573)
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研究分担者 |
児玉 浩子 帝京大学, 医学部, 教授 (00093386)
菊池 敦生 東北大学, 大学病院, 助教 (30447156)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | Menkes病 / 銅補充療法 / macular mouse |
研究実績の概要 |
H25年度では、Menkes病の病態を反映するモデルマウス(macular mouse)のヘミ接合体雄に酸化還元電位の異なる様々なbis(tiosemicarbasone)銅錯体を経口投与し、効果を調べた。その結果、経口投与の場合Cu-GTSMが、効率よくmacular mouseを生存させることを見出した。そこで、H26年度では、このCu-GTSMを中心にその効果を詳細に検討し、以下の結果を得た。 1) macular mouseのヘミ接合体雄は未治療であれば生後1か月以内に全例死亡する。しかし日齢5よりCu-GTSMを投与することにより生後1ヵ月を超えて高率に生存した。一方、塩化銅の投与では生存できなかった。このことからCu-GTSMはその脂溶性により消化管より吸収され銅を遊離、その銅が各組織で利用されることが示唆された。生存する確率は用量依存性であったが、高用量では一過性に下痢の頻度が高まり、投与量には制限があった。 2) 脳組織において、Cu-GTSMは銅濃度、並びに銅依存性酵素であるcytochrome oxidaseの活性を未治療群に比較して有意に上昇させた。また、Cu-GTSM投与群ではnoradrenaline/dopamine比が未治療群よりも有意に高く、これは銅依存性酵素であるdopamine β hydoroxylaseの活性の部分的な回復を示唆する。これらの結果から、Cu-GTSMにより銅が血液脳関門を越えて脳内に送達され、利用されることが確認された。 3) 協調運動能を示唆するとされるrota-rod試験を月齢3ヵ月時に行った。正常対照には有為に劣るが、一定速度までrod上にとどまることができた。その値は、Cu-GTSM低用量、高用量群間で有意差がなく、用量依存性が認められなかった。 以上から、Cu-GTSMはMenkes病の治療薬となる可能性が示唆された。しかし、本剤は各種溶媒に難溶であり、また高用量では下痢が見られる等の制約があり、誘導体の作成、ドラッグデリバリーシステム上の工夫などを今後検討する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していたbis(tiosemicarbasone)銅錯体のうち、Cu-GTSMの投与により病態マウスは比較的効率よく生存するため実験の進捗が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
bis(tiosemicarbasone)銅錯体のうち、Cu-GTSMが経口投与においてはMenkes病病態マウスの生存に最も有効であったので、次年度はこの薬剤を用いて主に以下の2点を検討したい。 1)生後2週齢付近で一過性にみられる下痢を改善できないか検討する。この状態の腸管の病理組織像を観察する。また、マウスでは生後数週間は、消化管における銅の吸収の制御が未熟であることが知られている。そこで、生後1ヵ月を過ぎた成熟したマウスに本剤を投与し、下痢が誘発されるか観察する。さらに、製剤上の工夫から(リポゾーム化、徐放化等)下痢の頻度を下げられないか検討する。 2)生存率は用量に依存したが、協調運動能は用量を増やしても改善されなかった。そこで、さらに早期から銅を補充すれば協調運動能の改善が見られないか検討する。Cu-GTSMは脂溶性が高く胎盤も受動的に通過できると想定される。そこで、妊娠母体にCu-GTSMを投与し、経胎盤的に胎仔に銅を供給しつつ出生させ、その後もCu-GTSMにより加療しつつ生育、運動能に改善が見られないか検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
若干の実験計画変更から、試薬の購入金額が想定していたよりも減少したため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度予定の実験に組織染色の項目を追加することで有効に活用する。
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