研究課題
平成27年度は、Menkes病モデルマウスにおいて、銅錯体(Cu-GTSM)経口投与の効果をさらに進め、以下の結果を得た。1. 銅の体内動態を肝臓でも検討した。正常対照では日齢15において、肝組織中の銅濃度は脳など他の臓器より10倍以上の高濃度で蓄積されていた。これは、生後より離乳までは、母乳よりも肝臓から銅が供給されるとのこれまでの報告と合致する。一方、病態マウスではその蓄積が見られず、銅が枯渇した状態で生まれてくることが明らかとなり、早期からの銅錯体の投与の必要性が裏付けられた。2. 血清中セルロプラスミン活性を日齢15で測定した。銅錯体非投与群では著しく低下していたが、銅錯体投与群では正常対照と有意差なく、速やかなセルロプラスミン活性の回復がみられた。消化管から吸収された銅錯体は門脈系から肝臓に到達して銅を解離し、生理的な銅送達系であるセルロプラスミンに組み込まれ体循環に放出されると考えられた。血液脳関門を超えて銅を脳内に送るためには、一定の割合で銅錯体ままで体循環に移行する必要がある。吸収された銅の何割が解離せずに体循環に移行するか、その一次通過効果を今後検討する必要が生じた。3. 銅と亜鉛は消化管の吸収において競合する。銅錯体の経口投与により亜鉛の吸収が抑制されないか日齢15で検討した。体内の主要臓器(大脳、小脳、肝臓、腎臓、心臓)において組織中亜鉛濃度を比較したが、銅製剤投与群、非投与群、正常対照間で有意な差は見られなかった。従って、銅製剤による亜鉛の吸収抑制は問題とはならないと考えられる。
すべて 2015
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J Neurol Sci.
巻: 349 ページ: 190-195
10.1016