研究実績の概要 |
ウエスト症候群は乳児期に発症しepileptic spasm、脳波上hypsarrhythmia、重度の精神発達遅滞を特徴とするてんかん性脳症の一つで、その遺伝学的背景の大部分は不明である。申請者は、Gバンド法により染色体異常症(Smith-Magenis症候群)が明らかになった小奇形を伴うウエスト症候群の症例を初めて報告し、原因不明の潜因性ウエスト症候群に小奇形を伴う症例が多いことに着目してきた。小奇形と精神遅滞を伴うことは、染色体異常の存在を示唆する現象であるが、通常のGバンド法で染色体異常が検出されることは稀である。そこで、マイクロアレイCGH法による解析を行ってきた。全例が弧発例であることに着目し、患児に存在し、罹患していない両親には存在しないde novoのコピー数異常(CNV)領域を解析することは、ウエスト症候群の疾患感受性遺伝子の検索につながる。孤発患者とその両親のトリオ検体を対象に、マイクロアレイCGH法で解析したところ、18例中2例に認めたそれぞれde novoのCNV(Del 19p13.2, Dup Xq27.2q28)は、てんかんと発達遅滞に関連する既知の遺伝子を含んでおり、ウエスト症候群の原因と考えられた。 コピー数という量的変化のみならず、その中の配列変異や構造多型などの質的変異を効率よく解明する方法として、次世代シーケンサーを用いたエクソーム解析がある。そこでCNVを認めなかったトリオ検体14例において、次世代シーケンサーを用いたエクソーム解析によりde novoの塩基配列変化を検索した。その結果、てんかん性脳症の既知の原因遺伝子(SLC35A2, ALG13)異常のほか、新規の候補遺伝子(NR2F1,BRWD3,CACNA2D1)を検出した。
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