研究課題
遺伝性ニューロパチーを代表するCharcot-Marie-Tooth(CMT)病は2,500人に1人と頻度が高い疾患である.私達は,人末梢ミエリン蛋白の分子生物学的研究と共に日本人CMT病約350名の遺伝子を解析してきた.しかし,半数以上の症例では病因が同定されず,病因の解明が待たれる.本研究では,劣性遺伝を示す家系において,SNPsを用いた連鎖解析と次世代シークエンサーを組み合わせた解析を行い病因の解明を試みた.対象は,劣性遺伝を示す軸索型および混合型CMT病の2家系である.最初に,SNPsマイクロアレイにより12q24への連鎖(LOD 4.23)を確認した.次に,罹患者の一人について,全ゲノムシークエンスを解析し,cytochrome c oxidase subunit VIa polypeptide 1 (COX6A1)遺伝子の 5塩基の欠失(c.247_10_247_6delCACTC)を検出した.2家系の罹患者全てがこの変異のホモ接合体であることを確認し,また,両親を含む非罹患者は,ヘテロ接合体ないし野生型のホモ接合体であることを確認した.末梢血白血球およびEBウイルス形質転換リンパ芽球を用いて,mitochondrial respiratory complex IV(cytochrome c oxidase [COX])活性,COX6A1mRNAおよびATP含量を測定し,罹患者における有意な低下を確認した.Cox6a1 knockout null miceでは,歩行困難を呈し,神経原性の筋の萎縮,神経伝導速度の遅延,COXの活性低下およびATP含量低下を確認した.以上の研究から,COX6A1変異は,劣性軸索型または混合型CMT病の病因のひとつであること明らかにした.
2: おおむね順調に進展している
2家系の解析が順調に進み,購入したノックアウトマウスの解析も共同研究者の協力により,病理,生理学的な病態も明らかに出来た.これらの情報を合わせて,論文に掲載することができた.
COX6A1変異は,当初,Charcot-Marie-Tooth病軸索型の病因遺伝子として解析を始めたが,その後,混合型を呈することも明らかにされた.残りの研究期間には,これらの遺伝子変異が脱髄型の病因となりうるか,症例を解析することで明らかにしたい.
今年度の研究において試薬や消耗品の使用量に変更が生じ、購入費の削減につながってしまったため。
次年度の試薬や消耗品の購入に充てる。
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Am J Hum Genet.
巻: 95 ページ: 294-300
10.1016/j.ajhg.2014.07.013. Epub 2014 Aug 21.