Pompe 病では、リソゾーム酵素acid alpha glucosidase の先天欠損により、リソゾームに基質であるグリコーゲンが蓄積するとともに、autophagyの異常が関与し、ミオパチーや心筋症が引き起こされる。現在酵素補充療法が行われており、予後が改善されているが、特にミオパチーに対し、治療効果の改善が望まれている。Pompe 病に対する更なる治療介入方法を模索するために、microRNA解析を行った。microRNA は遺伝子発現抑制を引き起こすncRNAであり、腫瘍の抑制や増殖を制御していることが判明しており、神経筋疾患や代謝性疾患においてもbiomarkerや治療介入のターゲットとなりうると考えられる。 Pompe 病骨格筋および高CK血症を示さない対照骨格筋におけるマイクロRNA解析を行った。 DNAチップ解析は、Pompe 病骨格筋および対象凍結骨格筋約5mgからmicroRNAを含むtotal RNAを分離し、2100Bioanalyzerによるtotal RNA RIN 解析後、3D-GENE miRNA labeling kitを用い、AP処理、標識、ハイブリダイゼーションを行った。3D-GENE Scanner 3000を用いてScanを行い、数値化された約2500種類のmicroRNA dataを解析した。統計学的解析はFisher検定およびt検定を用いて行った。 まず骨格筋特異的miRNA(myomiRNA)に注目して解析した。Pompe 病骨格筋においては、miR-499a-5p、miR-206、miR-208b-3pの発現が約40%に低下していた。miR-206の発現が著しく亢進することが判明しているDuchenne型筋ジストロフィーとは異なるprofileであった。 autophagyに関与する遺伝子の発現を制御すると考えられているmiRNAの発現の解析では、BECN1の発現を抑制するmiR-30a-3pの発現の低下が示唆された。 Pompe 病におけるマイクロRNA発現のprofileについて、さらに詳細な検討を行う必要がある。
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