研究課題/領域番号 |
25461545
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
毛利 育子 大阪大学, 連合小児発達学研究科, 准教授 (70399351)
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研究分担者 |
谷池 雅子 大阪大学, 連合小児発達学研究科, 教授 (30263289)
下野 九理子 大阪大学, 連合小児発達学研究科, 講師 (60403185)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 自閉症 / ミクログリア / 神経炎症 / プロスタグランジンD合成酵素 / シナプス |
研究概要 |
自閉症は病態上の主座がシナプスにあること、また、生後の樹状突起棘の刈り込み異常が病態に関与していること(Hutslerand Zhang. Brain Res. 2010)が知られてきている。さらに、ミクログリアを中心とした神経炎症機序が自閉症発症に関与していることが大きな注目をあつめている。胎内感染や周産期の低酸素イベントなどが自閉症発症リスクを高めることから、幼弱脳における 炎症機転が自閉症発症に重要な影響を与えると考えられる。我々は長年脳における炎症担当細胞であるミクログリアの神経炎症における役割を研究してき、活性化したミクログリアが、 造血器型 PGD 合成酵素(HPGDS)を発現し、強力な炎症メディエータであるプロスタグランジン D2(PGD2)を産生する事を見いだした(Mohri et al. Glia, 2003)。 我々は自閉症脳においてもHPGDSを介した炎症機転があるとの仮説のもと、ヒト自閉症脳における造血器型プロスタグランジンD合成酵素(HPGDS)の発現をしらべるため、米国 Autism Tissue Program (ATP)からヒト剖検脳を入手し、そのパラフィン切片でHPGDS 免疫染色を行った。結果、自閉症患者脳の小脳およびBA19領域ではコントロール脳に比し HPGDS 陽性細胞が増加していることを確認した。さらに、各種細胞マーカーとの二重染色を行った結果、HPGDS 陽性細胞はCD68陽性ミクログリアであることを確認した。 さらにATPから分与された凍結組織をから RNA 抽出を行い、定量的RT-PCR を 行い、HPGDS mRNA の定量を行った。結果、自閉症脳ではHPGDSの有意な上昇を確認した。自閉症HPGDS の上流酵素である phospholipase A2 や Cyclooxygenase の発現、および下流にある PGD2 特異的レセプターDP1, DP2 の発現について 定量的RT-PCR を施行したところ、DP2の有意な上昇を認めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ATPからの組織供与がスムーズにいき、解析が勧められている。
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今後の研究の推進方策 |
ヒト自閉症脳サンプルを用い、IL-1β、IL-6、TNFα、MCP-1 などのサイトカインの発現を定量的RTーPCRにて測定し、正常脳との違いを調べる。また、幼弱マウスにおけるHPGDS発現の意義を調べるため、日齢1から20までのマウスにHPGDS 阻害剤(HQL-79)を投与し、日齢20でサンプリングし、アストロサイト、ミクログリア、オリゴデンドロサイトなどの各種マーカーで免疫染色をするとともに、シナプスの形状を特殊染色にて行っていく。また、マウス脳におけるサイトカインなどの発現を定量的RT-PCRにて検討する。また、HPGDS阻害剤を投与したマウスにおいて、脳の形態的変化を認めた場合、 Y 字型迷路試 験、新奇物質探索試験,ソーシャル・インタラクション テストなどの行動評価を行っていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度、マウス代等の費用がかかるため。 マウス代、マウス飼費、に使用する。
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