研究課題
基盤研究(C)
ダウン症候群は約330個の遺伝子をコードする21番染色体のトリソミーが原因となり、多彩な合併症を呈する。しかしどの遺伝子群がどのようメカニズムで病態に作用しているのか分かっていない。本研究ではとくに発症頻度の高い一過性骨髄増殖症(TAM)と呼ばれる前白血病状態に注目し、その病態形成に関わる21番染色体上のTAM責任遺伝子群/領域の同定を目的とする。そのためにダウン症患者から樹立したヒトiPS細胞と人工ヌクレアーゼの技術を組み合わせ、病態を再現することのできる実験モデルを確立する。本年度はまず、ダウン症児および健常児由来のヒトiPS細胞の樹立と、TALE nucleaseによる遺伝子改変技術の確立を行った。具体的にはTAMを発症あり/なしのダウン症児および健常児の臍帯血を同意書を取得した上で採取し、単核球を精製し、持続発現型センダイウイルスを感染させることでiPS細胞を樹立した。これらにおいてセンダイウイルスが除去されていること、未分化性・多能性を保持しいてること、核型などに変化が起こっていないことを確認した。またTALENについて、ヒトiPS細胞上で最大の効果が得られる条件を検討した。その結果、ヒトEF1αプロモーター下での発現誘導とNEONをもちいた遺伝子導入が有効であることを明らかにし、目的のGATA-1エクソン2付近におけるTALENを作製することができた。
2: おおむね順調に進展している
必要とされたTAM発症ダウン症児からの臍帯血を得ることができ、これをもとにして研究課題の根幹を成すヒトiPS細胞の樹立と、遺伝子改変技術の確立に成功した。TALENをもちいたヒトiPS細胞での遺伝子改変技術には高度の技術と経験が必要であるが、それを高い効率で実施できることになり、今後研究がスムーズに進むことが可能と期待される。
作製したiPS細胞に対して遺伝子改変を進め、部分ディプロイド化iPS細胞の樹立を目指したい。そのためにはトリソミーとなっている21番染色体のSNP/STR解析を行うことで各アレルがどの染色体上にあるのかを明らかにすることが必須である。現在その解析を進めている。また作製したiPS細胞を血液分化誘導するための系を立ち上げる必要があり、現在条件検討中である。
センダイウイルスをもちいたiPS細胞樹立には多くの消耗品が必要であり、今回はその樹立のために研究費を計上していたが、今年度得られた臍帯血検体の数が少なかったため、この樹立を行えなかった。その代わり遺伝子改変を進めたとともに、残った研究費を来年度に繰り越した。2年目は予定通りの検体が得られると期待されており、それらの樹立・解析に研究費を使用する。
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