研究課題
ダウン症候群は約330個の遺伝子をコードする21番染色体のトリソミーが原因となり、多彩な合併症を呈する。しかしどの遺伝子群がどのようメカニズムで病態に作用しているのか分かっていない。本研究ではとくに発症頻度の高い一過性骨髄異常増殖症(TAM)と呼ばれる前白血病状態に注目し、その病態形成に関わる21番染色体上のTAM責任遺伝子群/領域の同定を目的とする。そのためにダウン症患者から樹立したヒトiPS細胞と人工ヌクレアーゼの技術を組み合わせ、21番染色体上のさまざまな領域をアレルの1本から欠失させた「部分ディプロイド化21トリソミーヒトiPS細胞」を作製し、血球分化誘導を行うことによって、責任領域を決定していくことを目指している。昨年度までに、ヒトiPS細胞におけるゲノム編集技術の確立を行い、21番染色体の核型(2または3本)およびGATA1遺伝子の遺伝子型(正常型、短縮型、欠失型)の組み合わせによる6種類のiPS細胞樹立に成功している。これらを分化誘導することで、トリソミーとGATA1変異による造血における異なる役割を明らかにすることができた。今年度はさらに、分化誘導された血球細胞において、トリソミーでとくに発現量の高い遺伝子群がコードされる4Mb領域の欠失に成功し、それらの血球分化誘導を行うことができた。そしてこの4Mb領域のトリソミーが、まさしく造血異常の原因領域であることを示すことができた。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件)
Cell Reports
巻: 15 ページ: 1-14
DOI: http://dx.doi.org/10.1016/j.celrep.2016.04.031