研究実績の概要 |
甲状腺ホルモン(TH)トランスポーターMct8欠損マウスでは、視床下部の甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)は過剰発現しており、THを大量投与しなければ抑制されない。一方、MCT8異常症患児に生理量のTHを投与すると甲状腺刺激ホルモン(TSH)値は低下する。したがって、下垂体では生理量のTHによるnegative feedbackが機能していると考えられる。しかし、下垂体のTHトランスポーターの詳細は未だに不明である。そこで本研究では、下垂体においてTHのnegative feedbackを担うTHトランスポーターの同定を目指している。 1) 下垂体前葉TSH産生細胞におけるTHトランスポーターの局在検討 下垂体前葉の網羅的検討で高発現が確認されたLat1, Lat2, Oatp3a1がTSH産生細胞における発現していることを確認するため、マウス下垂体の凍結組織切片を用い、in situ hybridization法と抗TSH抗体(Parlow AF, National Hormone and Peptide Program, NIDDKより供与)との二重染色を試したが、切片へのダメージが大きいため、連続切片で再試行している。 2) TSH産生細胞における甲状腺ホルモントランスポーターの発現解析 下垂体TSH産生細胞不死化株TαT1(Mellon PL, University of California, San Diegoより供与)を用い、RT-PCR法でTHトランスポーターを網羅的にスクリーニング後、定量的RT-PCR法を用いて定量したところ、下垂体前葉と同様に、Lat1, Lat2, Oatp3a1の発現が最も高かった。今後この細胞において、これらのTHトランスポーターをノックダウンし、機能解析を行うことは可能と考えられたため、条件の最適化を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
共局在を証明するため、マウス下垂体の凍結組織切片を用い、in situ hybridization法でTHトランスポーター、抗TSH抗体(Parlow AF, National Hormone and Peptide Program, NIDDKより供与)のTSHの二重染色像を得るべく、種々の方法を試したが、切片へのダメージが大きく、この方法で共局在を証明することは困難であった。そのため、方法としては劣るが、連続切片を用いて再試行している。また、それぞれのTHトランスポーターのin situ hybridization法の最適化に時間がかかっており、その分遅れが出ている。
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