1.薬剤性カルニチン欠乏症の臨床情報収集 前年度に引き続きピボキシル基を含む抗菌薬の内服によるカルニチン欠乏症例の集積を試みた。本年度は新しい二次性カルニチン欠乏症患者の診断はなかった。初年度のまとめた22例については英文誌に投稿し、社会に周知するように努めた(J Pediatr. 2016 Apr 5 Epub ahead of print)。 また、シベレスタットナトリウムによるC5アシルカルニチンの上昇例を2例報告した(Mol Genet Metab. 2015 Nov;116(3):192-4)。そのうち一例は日齢14女児、別の一例は4歳 女児でった。前者についてはカルニチン欠乏は来していなかったが、後者についてはC0 9.16 µMとカルニチン欠乏を認めた。いずれの症例においてもシベレスタットナトリウム肺障害に対する合併症軽減目的で使用されていた。 2.遺伝背景の有無による薬剤性カルニチン欠乏症発症リスクの検討 昨年に続きin vitro probe assayによる培養皮膚線維芽細胞内外のアシルカルニチン濃度を測定するための検討を行った。前処理等を検討したところ、細胞内アシルカルニチン、遊離カルニチン濃度の定量も安定した。本年度はこれまで申請者が診断した脂肪酸代謝異常症(全身性カルニチン欠乏症 4名、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ-Ⅰ欠損症 3例)、健常コントロールを4例について、培養皮膚線維芽細胞内外のアシルカルニチン分析を行った。細胞内C0/細胞外C0比を検討すると、CPT1欠損症では細胞内カルニチン濃度の上昇を反映して高値となり、全身性カルニチン欠乏症症例では細胞内遊離カルニチン低値を反映しコントロールの1/10以下と著しく低値である事が確認できた。本検討を昨年同定した、4日間のピボキシル基を含む抗菌薬内服後に低血糖性脳症を発症した1歳男児例について、前述のIVPアッセイを行った。細胞内C0/細胞外C0比は健常コントロールよりは低いものの全身性カルニチン欠乏症例とは明確な区別が可能であった。
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