研究実績の概要 |
・HMGB1が幼児期熱性痙攣重積後の後天性てんかん発症を促進させるメカニズムの解明 我々の開発した「幼弱ラット温熱誘発痙攣重積モデル」を用い、痙攣重積負荷直後にHMGB1を点鼻投与する群(HMGB1群)と生理食塩水を投与する群(対照群)に分け成熟期の後天性てんかん発症について検討すると、対照群では殆ど後天性てんかんが発症しないのに対して、HMGB1群では有意に後天性てんかん発症率が高かった(p=0.027)。このHMGB1群を更に2群に分けて、てんかん発症群(Epi+群)と非てんかん発症群(Epi-群)とした。2群間で脳の病理学的検討を行ったところ、CA1、CA3領域および脳梁で有意なアストロサイトの増加が認められた(CA1, p=0.026; CA3, p=0.019; 脳梁, p=0.026)。これに対して、同部位での神経細胞やマイクログリアについては2群間での差は認められなかった。今年度の研究結果は、アストログリオーシスが後天性てんかんの発症に関与することが示唆されたが、これが後天性てんかんの原因なのか結果なのかについては結論を得られなかった。
・ヒト熱性痙攣患者でのHMGB1遺伝子異常の有無 HMGB1遺伝子領域のtag SNPであるrs3742305について、Applied Biosystems社のTaqMan SNP Genotyping Assay(C_25759077_10)を用いて、熱性けいれん群 248例(単純型 185例、複雑型 63例、対照群 225例)についてgenotypingを行った。遺伝子型頻度についてカイ二乗検定を行ったが有意差を認めなかった。よってHMGB1遺伝子のこの多型は熱性けいれん発症への遺伝的関連性が認められなかった。HMGB1は熱性けいれん感受性よりもその後のてんかんへの進展(epileptogenesis)に関連のある経路の可能性があり、次の検討課題となった。
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