研究課題
Sotos症候群 (SoS) は、出生前の過成長、精神遅滞などを特徴とする過成長症候群である。その原因遺伝子は、ヒストンH3リジン36メチル化 (H3K36me) 酵素として機能するNSD1である。そのNSD1の変異は、SoSのみでなく、同じ過成長症候群であり、11p15領域のDNAメチル化異常による刷り込み遺伝子の発現制御の破綻によって生じるBeckwith-Wiedemann症候群(BWS)においても稀ではあるが報告されている。近年、DNAメチル化酵素がH3K36meを認識することが報告された。このことは、NSD1の機能不全が刷り込み遺伝子制御領域のH3K36meの低下を引き起こし、DNAメチル化に影響を及ぼす可能性を示唆する。前年度、NSD1変異を持つSoSの末梢血DNAにおいて、刷り込み制御領域のメチル化異常が定量的メチル化解析法MassaRRAYによって検出された。今回、異常が検出された領域を別の定量的メチル化解析法であるpyrosequenceを行い、その異常を確認した。これら異常領域には、BWSの原因遺伝子座に位置し、細胞増殖を正に制御する遺伝子の発現制御に関与すると思われる領域が含まれていた。このことは、この異なる2つの症候群の表現型の類似性を説明可能にする。一方、NSD1の標的遺伝子をゲノム網羅的に調べるため、レチノイン酸で神経系に分化することのできるNCCIT細胞を用い、そのNSD1遺伝子の下流に3xFlagあるいは、HA-FlagをCRISPR-Cas9 systemによって挿入した。このNCCIT細胞は、NSD1-3xFlagあるいはNSD1-HA-Flag融合蛋白を発現するため、今後、Flag抗体を用いて、標的遺伝子の同定が可能になる。
2: おおむね順調に進展している
NSD1の変異を持つSoS末梢血DNAにおけるDNAメチル化解析は期限内に終了した。ただ、DNAメチル化異常を認める領域が遺伝子発現にどのような影響を与えるか、in vitro系の解析法樹立が手探りの状態にある。一方、NSD1の標的遺伝子の探索に関しては、解析可能と思われるNCCIT-NSD1-3xFlag、あるいはHA-Flag細胞株を樹立することがほぼ予定どうりにできた。よって、おおむね順調に研究は進展している。
NSD1の変異を持つSoS末梢血において、DNAメチル化異常を示した領域が遺伝子の発現にどのような影響を及ぼすかを解析する。方法は、おもにヒト正常線維芽細胞にDNA脱メチル化剤を投与し、非投与と比較することにより行う。さらに必要でれば、ルシフェラーゼアッセイによって、DNAメチル化による転写への影響を調べる。一方、NSD1標的遺伝子をゲノム網羅的に同定するため、NCCIT-NSD1-3xFlag細胞を用い、Flag抗体によるChIP-seqを行う。
次年度に、次世代シークエンサーの解析を委託する料金が高額なため、今年度は節約した。そのため次年度使用額が生じた。
NCCIT-NSD1-3xFlag細胞を用い、Flag、H3リジン36メチル化抗体などによるChIP-seqとその解析を業者に委託する。
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Clinical Genetics
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
Genetics in Medicine
巻: 16 ページ: 903-912
doi:10.1038/gim.2014.46
Pediatrics International
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http://www.biomol.med.saga-u.ac.jp/mbg/index.htm