研究課題/領域番号 |
25461558
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
徳原 大介 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (60448751)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 自然免疫 / 樹状細胞 / サイトカイン / Toll-様受容体 |
研究実績の概要 |
ワクチン接種による獲得免疫を誘導する上で、免疫誘導の出発地点となるのは自然免疫であり、樹状細胞などの抗原提示細胞に発現するToll-like receptor(TLR)である。本研究ではムコ多糖症患者の自然免疫応答を明らかにすることが目標の一つであるが、対照となる健常人の自然免疫応答についても不明な点が多い。具体的には、(1)ムコ多糖症患者の自然免疫応答を評価する上で基準値となる健常人の免疫応答に年齢に伴う変化、(2)10種類におよぶ多様なヒトTLRに応じた免疫応答の差、が不明であり本研究を円滑に推進していく上で重要なこれらの問題点を明らかにすることとした。実際には、新生児期の免疫を反映する臍帯血中の免疫担当細胞と健常成人の末梢血液中の免疫担当細胞(単球、樹状細胞、単球由来樹状細胞)を各種TLR作動薬で刺激し、それらの免疫担当細胞から産生される炎症性サイトカインを測定した。 方法としては、臍帯血および成人血から分離した単球(Mo)、樹状細胞(DC)、単球由来樹状細胞(MoDC)をLPS , Pam3CSK4, flagellin, zymosan, poly(I:C), imiquimod, ならびに CpGを用いて刺激し、各種細胞から産生される炎症性サイトカイン(IL-6, IL-8, TNF)の濃度を測定した。LPS、Pam3CSK4、Flagellin刺激では、炎症性サイトカイン産生はMoにおいて成人血で高く、DCでは成人血と臍帯血間に差はなく、MoDCでは臍帯血が成人血よりも高い傾向にあった。poly(I:C)、imiquimod、CpGは成人血・臍帯血のどの種類の細胞においても炎症性サイトカインの産生は低値であった。一方、TLR2の作動薬であるZymosan(出芽酵母や真菌壁の多糖成分)は、成人血および臍帯血の各免疫担当細胞において炎症性細胞産生を誘導するとともに、臍帯血の各細胞における炎症性サイトカインの産生量が成人と同等であることを見いだした(Nohmi K, Tokuhara D. J Pediatr 2015)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
自然免疫を評価する上で要となるToll様受容体(TLR)の刺激による免疫応答について、本研究の比較対照となる健常者の年齢に伴う変化、TLRの種類や免疫担当細胞の種類による差異について明らかにすることができ、論文化することができた。小児では年齢に伴う変化を加味する事は重要であり、今後の研究の基盤となるデータを蓄積する事ができた点で意義が大きい。
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今後の研究の推進方策 |
今後は前年度に作成したムコ多糖症特異的iPS細胞から分化させた樹状細胞を用いて、本年度の研究で用いた各種TLR作動薬;LPS (TLR4リガンド), Pam3CSK4 (TLR1/2リガンド), flagellin (TLR5リガンド), zymosan (TLR2リガンド), poly(I:C) (TLR3リガンド), imiquimod (TLR7リガンド), ならびに CpG (TLR9リガンド)を反応させ、炎症性サイトカイン(IL-8, IL-6, TNF)の産生濃度を測定する。また、各免疫担当細胞のTLRの免疫応答は年齢によっても異なることが本年度の研究でも明らかとなったことから、分化させた細胞の培養条件・培養日数・成熟度などが免疫応答にも大きく作用すると考えられる。今後は、分化させた樹状細胞の生育条件を様々に変化させ、TLR刺激による自然免疫応答を解析していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度計画していた研究の一部を次年度に実施する事から、その研究に要する次年度使用額が生じた
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次年度使用額の使用計画 |
免疫担当細胞のTLRを刺激した後の表面分子マーカーの発現の検索を行う。
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